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乱世の確率事象改変
一人月を背負う
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 愛紗と鈴々は動ける兵を連れて民達の手助けに向かった。
 帰ってきた俺を見て鈴々はしきりに大丈夫か? もう倒れないか? もうどこにも無理して行かないか? と聞いてきた。
 朱里が民の救援活動の手伝いを、と伝えに来た時は
「お兄ちゃんはここで雛里と朱里と留守番してるのだ! 絶対に動いちゃだめなのだ!」
 と涙ながらに厳しく言い残し、それでもどこか心配した顔をしながら洛陽に走って行った。
 愛紗はというと、何を考えているのか無言で悲しげにこちらを見てすぐに兵のまとめに戻り、洛陽に向かう時も何も言わずに桃香の手伝いの為に動いていった。
「二人とも優しいな」
「はい、お二人なりの気遣いだと思います」
 地に降ろしたがこちらの手を握って離さない雛里が告げる。ほんのりと暖かい手は戦で疲れた心に安心感を与えてくれた。
「二人とも自身を責めないでくれるといいんだが」
 あの優しい二人の事だ。きっと自分自身を責めてしまっているだろう事は想像に難くない。
「朱里、すまないな。残って貰って」
 何故か終始無言で俯いて着いて来ていた朱里に話しかけると、
「はわわ! だ、だいじょぶでしゅ!」
 どこか暗い顔をしていたが声を掛けるとすぐに顔を上げ、最近はめっきり聞かなくなった『はわわ』が聞こえた。
「……秋斗さん、その……私も手を繋いでも……いいでしょうか?」
 真っ赤な顔をしながら朱里がもじもじと言う。
 この子も心配してくれたんだな。
 少しその可愛い仕草に悩殺されそうになったがなんとか気を引き締めることができた。
「ああ、いいぞ」
 返事をするやすぐに隣にならんで雛里とは反対の手を握り、恥ずかしそうに俯いて歩き出した。
 雛里が少し怪訝な顔をしているがどうしたんだろうか。
 そのまま三人で歩き、何故か無言のまま、俺の天幕の前まで着くと徐晃隊の一人が俺達を見つけて吹き出し、笑いながら話しかけてくる。
「お、御大将……ふはっ、つ、ついに軍師様達を籠絡したんですか?」
 にやにやと笑う眼はこちらを茶化す事しか考えていないのが透けて見える。
「黙れバカ。二人は俺の無茶を心配してくれたんだ。なんにもやましい事はねぇよ。……お前達も此度の戦ではご苦労だったな」
 そう徐晃隊に言うと隣の二人は何故か不機嫌になりそれぞれが口を尖らせた。
「……相変わらずで。我らには鳳凰の加護がありましたから御大将の手を煩わせるまでもございませんでした」
 その言葉を聞き雛里が照れているのかわたわたと慌てて片手を振る。朱里はまだむーっと口を尖らせたままでいたが今は流しておこう。
「そうか。所で連行した二人は?」
「御大将の寝台に寝かせております。中では三人が護衛をしておりますので」
 訝しげな眼を向けながら報告をしてくる徐晃隊の一人。そういうことか
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