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乱世の確率事象改変
一人月を背負う
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「……理屈では分かってるわ。でも……抑えられなかったのよ。だって華雄は、もう帰ってこない……し……皆……ばらばらに……」
 それ以上続かずに泣き崩れてしまった。私は詠ちゃんの横に座って抱きしめ、背中を撫でる。
「皆さん、捕虜の身での非礼、申し訳ないのですが少し二人きりにしてもらってもいいでしょうか?」
 厚かましいお願いだ。でも詠ちゃんと少し話がしたい。聞いてくれるだろうか。
「桃香様」
「うん。皆、行こう」
 劉備さんの言葉に皆が天幕内から出て行き始める。顔を上げた徐晃さんの頬には涙の後があった。皆が出て行ってから少し遅れて一人出て行こうとする彼に声を掛ける。
「徐晃さん……王としての私の想いは、あなたが繋いでください。劉備さんではなくあなたに繋いで欲しい」
 口から出たのはそんな言葉だった。
 流されるでなく自分で選んだ彼に託したかったから。
「……分かった」
 振り向いた彼はすっと目を細めて私の瞳を幾分か見つめ、短い返答をして出て行った。
 そこで私の目から塞き止めていた涙が溢れ出る。
 責任から解放された安心と、生きていていいんだという安息と、多くを失ってしまった哀しみからその涙は留まることを知らない。
 天幕に二人残った私達は、それから長い時間抱き合ったまま泣き続けた。


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