暁 〜小説投稿サイト〜
【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
役者は踊る
第六三幕 「覆水は盆に返らずとも」
[1/5]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
前回のあらすじ:お酒は二十歳になってから


数日前までの自分は頭がパーだった。シャルはそう認めざるを得なかった。
こういった公の試合は何気に初めてだから舞い上がっていたのもあるかもしれないし、「時代錯誤だ」などとデュノア社のミサイル開発部を馬鹿にした連中を見返したいという気持ちもあったかもしれない。しかしだからと言って・・・あれは無い。自分で思い返してもなかった。

催眠術を使ってミサイル仲間を洗脳などと・・・馬鹿か。阿呆か。間抜けか。大体あの催眠術は本当に必要な時だけ使うなと念を押されたにもかかわらずこの有様。本をくれた友人にも申し訳が立たない。結局あの本は紆余曲折の後にクラースが預かることになった。しっかり反省しているとのことで特別に本の始末は免れたが、これから与えられた罰則をすべて終えるまでは手元に戻ってこない。

確かにミサイルは好きだし、それが使われない現状に不満はあった。ここいらでデュノア社の新製品を存分に使いまくって宣伝効果を得る気も最初からあった。しかしミサイルの力を如何にして見せつけるかのアイデアを煮詰めすぎた結果、全く周囲が見えなくなっていた。父親だって弱みは握っているが嫌いなわけではないのだ。ミサイル開発にも理解を示し、後押ししてくれた。その父親の顔に泥を塗ったと思うと更に気が重い。

・・・最悪の気分だ。武装をほぼミサイルオンリーにしたせいで勝てる試合を落としたし、鈴とユウにも多大なる迷惑をかけた。ユウには既に謝って、げんこつ一発で赦してもらえたが。問題は簪だ。大して面識もない人間にいきなり誘拐され、そのまま洗脳を掛けられて傀儡の如く扱われたのだから平気でいられるわけがない。鈴だって許してくれると決まったわけじゃないのだ。おまけに試合中はちょっとハイになったせいでおかしな事ばかり口走っていたような気がする。正直、それを同級生たちや会場の人間に聞かれたと思うと穴に潜って永眠したい気分になる。

しかしそういう訳にもいかない。僕にはまだ鈴と・・・簪への謝罪と言う特大の用事が残されているからだ。・・・とても気が重い。

「鬱だ死にたい」

ああ、気が付けばもう保健室が目の前だ。もう簪は目を覚ましているだろうか。覚ましてなければ先延ばし・・・もとい、後回しに出来るのに。



= = =



鼻腔をくすぐる病院独特の不思議な匂いと誰かの話し声につられ、簪は目を覚ました。
倦怠感のある体を起こし、声の方を見やると二人の生徒がいた。片方が一方的にしゃべっている風に見えるが、寝ぼけ眼の所為で顔まではっきり見えない。だが声には聞き覚えがあった。自分の親友であるユウの声だ。いつぞや自分に絡んできたときのように誰かに酔っ払いの様に絡んでいるようだ。

「分かる?イタリアじゃどうか知らないけどさぁ、
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ