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魔道戦記リリカルなのはANSUR〜Last codE〜
EpisodeU:
Vixi et quem dederat cursum fortuna peregi
Epos1夜天の主の下に集いし雲・守護騎士〜Wolken Ritter〜
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†††Sideルシリオン†††

グランフェリアを無事に救い、私は八神宅へと戻って来た。目前に佇む、この世界で1ヵ月と過ごした家を外から眺める。時刻は既に深夜1時。当然家の電気は消えているはずだが、リビングのカーテン越しから明かりが漏れている。はやてはまだ起きているか、もしくは以前のようにソファで眠りこけているか。
どちらにしろ、あまり良ろしくない。門構えを過ぎ、玄関扉のドアノブの鍵穴へ合鍵と刺し込もうとしたところで、そのまま動きを止める。ジュエルシードを回収し終えた今、ここに戻ってくる必要性はもうどこにも無いとも言えるんだが・・・。

(約束した・・んだよな。はやての誕生日を一緒に祝う、と。私の誕生日を祝ってもらう、とも・・・)

動物園ではやてと一緒に過ごした時間が走馬灯のように脳裏を駆け巡る。ほら見ろ、私。もう決意が揺らいでいるじゃないか。“堕天使エグリゴリ”の救済にだけ集中していれば、はやてと関わりを持たなければ、こんなにも孤独になりたくないと後ろ髪を引っ張られる思いをしなくて済んだ。
ドアノブの鍵穴に向けていた鍵を降ろす。そしてドアにコツンと頭を降ろす。
優しいはやて。あの子の心をズタズタに傷つける行為――姿を晦ますという最低を犯すことになってしまうターニングポイントがここだ。アンスールとしてのルシリオンを貫くなら、今すぐにでも立ち去るべきだ。きっとそれが正しい道だ。そう、幼いはやてを傷つけようとも、だ。だと言うのに、一向に足が動かない。揺らいでいるどころじゃない。完全に崩れ去ってしまっている。

「ルシル君か・・・?」

扉越しから聞こえてきたはやての声に、「っ・・!?」ビクッと肩を跳ねさせて一歩二歩と後退してしまう。ガチャガチャと鍵を開ける音がし、扉がゆっくりと開いて行く。そして「おかえり、ルシル君」はやてが迎え入れてくれる。

「お疲れ様や。ちょう遅かったから心配してたんよ」

スロープを上がっていくはやての背中を黙って見送る。彼女の口にはヨダレの跡が付いていた。無理に起きていようとして、しかし眠ってしまったという様子だ。そしてこうして私が帰って来たことにすぐに気付いたということは、それだけ気を張っていたに違いない。可哀想に・・・。私なんかの為に。

「どないしたん?・・・ルシル君?」

私が何も言わずにただ突っ立っていることに対して何か思うことがあったのかはやてはこちらに向き直り、少し何かを考えた後、小指1本だけを立てた右手を掲げて見せてきた。約束の指切り。事あるごとにはやてと交わしてきたものだ。

「・・・ルシル君・・・」

不安そうに私の名前を呼ぶはやて。ズキッと胸が痛む。世話になってから今までの中で一番のものだろう。彼女のそんな表情を見たその瞬間、一瞬にして創り出される言い訳。私は誓っ
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