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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十話 フェザーン謀略戦(その2)
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「承知しました。外にいる連中にやらせます」
俺の言葉にヴィオラ大佐が頷いた。時間は九時四十六分。ヴィオラ大佐が“白狐を誘き出せ”と指示を出している。思わず笑みが漏れた。さて、出てくるかな、白狐。早ければここには十分程で来るはずだ。

エレベータは二回に分けていく事になった。ヴィオラ大佐は一回目、俺はシェーンコップと一緒に二回目で七階に上がった。俺が七階に着くとヴィオラ大佐が近づいてきた。既に七階の警備兵が二名、床に倒されている。リンツとブルームハルトがサムズアップをしてきた。シェーンコップがサムズアップで応える。仕事が早いよな。

「我々の前の面会がまだ終わっていないようです、どうしますか」
「面会者は?」
「二人、或る財団の理事と秘書です」
時間を確認した。九時五十二分、約束の面会時間まで後十分、レムシャイド伯が来るとすれば後五分から十分だろう。シェーンコップと顔を見合わせた、彼が頷く。

「入りましょう、あまり時間が無い」
俺の言葉にヴィオラ大佐が頷いた。武装を整え執務室の中に入ったのは九時五十五分だった。

中に入ると三人の男性がソファーに座っていた。ルビンスキーと初老の男性、そして若い男だった。武装した俺達の姿を見てもルビンスキーは表情を変えなかった。老人は眉をひそめている。二人とも結構おちついているな。落ち着きが無いのは若い男だ、多分秘書だろうがキョロキョロしている。
「一体何だね、失礼だろう」

大したもんだ。老人の声はしっかりとしていてパニックを表すものは欠片も無かった。秘書の視線がキョロキョロと定まらない事を考えれば拍手してやりたいくらいだ。若い頃は商船を駆って危ない橋も渡ったのかもしれない。海千山千のしたたか者だったろう。俺はそういう男が嫌いじゃない。素直に好感を持った。

「申し訳ありません。そちらの自治領主閣下に緊急の用件が有りまして……」
「待てないというのかね」
「その通りです、貴方を巻き込みたくありませんので退室していただきたい。お願いします」
俺の言葉に老人はじっと俺を見た。そして一つ溜息を吐く。

「自治領主閣下、また出直して参ります。……若、帰りますよ」
???だった。皆も狐につままれたような顔をしている。どうやらボンボンの二代目としっかり者の番頭だったらしい。フェザーンでも時代劇みたいな設定が有るんだと素直に感動した。

老人が席を立ちドアに向かって歩き出すと若い主人がその後に続いた。悪いな、御老体。しかしあんたを巻き込みたくないというのは本当だ、大人しく出て行ってくれるのには感謝するよ。あんたの大事な若を大切にな……。

老人達が出て行ったがルビンスキーはソファーから動かなかった。面白そうな表情で俺達を見ている。こういうところが可愛げがないんだよな。
「何の用か
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