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コールドクリーム
第三章
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事に顔を向けた。そのうえで声をかけた。
「浴槽調べてくれませんか」
「浴槽か」
「ええ。ひょっとしたらこれと同じクリームがあるかも知れません」
「わかった」
 刑事は彼の言葉に頷くとすぐに制服の警官達を連れて浴槽に向かった。暫くして浴槽から全く同じクリームが出て来たのだった。
「た、たまたまだよ」
 渡邊は目を泳がせて顔を俯かせたうえで言葉を吐き出すのだった。
「こんなのよ。クリームだってな」
「まあクリームなんて幾らでもあるよな」
 本郷もそれは認める。
「しかしな。それでも」
「それでも。何なんだよ」
「これは普通のクリームじゃないんだよ」
「普通のクリームだよ」
 吐き捨てるような言葉だった。何故かそれをここで出してきた。
「コールドクリームがか」
「それで悪いのかよ」
「脂を隠す。違うか」
「うっ・・・・・・」
「それと血も」
 得意げな笑みを浮かべてさらに言葉を続ける本郷だった。
「違うかい?クリームで血痕を隠したんだよな」
「俺がクリームを使ってどうやって人を殺したっていうんだよ、あいつを」
「あいつを、か」
 役は今の渡邊の言葉を取った。まるで服の襟を取るかのように。
「あいつと今言ったな」
「くっ・・・・・・」
「それはまだいい。まだな」
「問題はクリームなんだよ」
 言葉尻を取ったことを相手の心に刻んだうえでさらに言葉を続ける。本郷はさらに言葉を続けるのだった。
「小説であったかな。それともゲームだったかな」
「ゲーム!?ゲームかよ」
「どれであったかはどうでもいいんだよ。ただ」
 さらに言う。渡邊を追い詰めるかのように。
「まず容疑者をベロンベロンになるまで酔わせる。とびきりの強い酒でな」
「そういえばウォッカがあったな」
 後ろにいる刑事が答えた。
「九十六パーセントか。よくもまあそんな強いものをと思ったが」
「酔わせてロープか何かで首を絞めて。それを残す馬鹿はいないな」
 さらに言葉を続ける。
「燃やしたか何処かに捨てたか。けれどそれはどうでもいいんだよ」
「どうでもいいのかよ」
「問題は殺した後だ」
 そこを指摘した。
「殺してそれをバラバラにする。持ち運びやすいようにな」
「俺が殺しをやったってのかよ」
「そうだよ。それはもうわかってるんだよ」
「今の貴様の言葉でもな」
 役は襟を取っていたその服を掴みを強くさせた。
「あいつといったな」
「それは言葉のあやだよ」
「あやではない」
 渡邊の抵抗をつっぱねた。待っているかのように。
「あやであいつと言うことはない」
「うう・・・・・・」
「話を続けるか」
 本郷は役の話を他所に自分の言葉を続けてみせた。その言葉で渡邊を追い詰めていっていた。そこには何の妥協も容赦もなかっ
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