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銀河英雄伝説〜悪夢編
第三十一話 オーベルシュタイン、お前は頼りになる奴だ
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トまで黒一色で装う元帥は穏やかに微笑みながら、私達にソファーに座るように勧めてくれた。テーブルには既に飲み物が用意されていた、コーヒーが二つとココアが一つ、ココアは元帥に用意されたものだった。元帥がメックリンガー総参謀長に同席するようにと命じた。

「それで、私に御用とは?」
「今度の内戦に際してマリーンドルフ家は司令長官に御味方させていただきます」
「内戦と言いますと?」
「いずれ起きるであろうブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯との内戦です」
力を込めて言ったつもりだが相手はまるで反応を示さなかった。

「フロイライン、内戦が起きるかどうかは未だ分かりません。それに私が勝つとも限りませんが?」
「いえ、閣下はお勝ちになります。ブラウンシュバイク公とリッテンハイム侯は一時的に手を結ぶ事は有っても最後まで協力することが出来るでしょうか? 二人はともかく周囲がそれを良しとはしないはずです。必ず仲間割れが起きるでしょう」
「……」

「それに軍の指揮系統が一本化していません。全体の兵力で閣下に勝る事があっても烏合の衆です。閣下の軍隊の敵ではありません。また貴族の士官だけでは戦争は出来ません。実際に戦争するのは兵士たちです。平民や下級貴族の兵士達はブラウンシュバイク公やリッテンハイム侯ではなく閣下をこそ支持するでしょう」

メックリンガー総参謀長が“ほう”と感嘆の声を発した。少なくとも彼には私の力量を印象付ける事が出来た。しかし司令長官の表情は変わらない。私の意見など彼にとっては取るに足らないものなのだろうか?
「見事な見識ですね、フロイライン。では具体的に何を以って協力してくれるのか、教えて頂けますか。そしてマリーンドルフ伯爵家は何を見返りに求めるのか……」

ここからが本当の勝負だ。間違えてはいけない。
「マリーンドルフ家は閣下に対して絶対の忠誠を誓い、何事につけ閣下のお役に立ちます。先ずは、知人縁者を閣下の御味方に参ずるよう説得いたしましょう」
「なるほど、では見返りは」
「マリーンドルフ家に対し、その忠誠に対する報酬として家門と領地を安堵する公文書を頂きたいと思います」

「そういう事で有れば私にでは無くリヒテンラーデ侯にお話しした方が良いでしょう。私には家門、領地安堵の公文書を発行する権限は有りませんし貴族の方々の離合集散には興味が無い。幸いマリーンドルフ伯爵領はオーディンから近い、伯爵家が味方に付く意味は大きいと思います。リヒテンラーデ侯は喜んで公文書を発行してくれるでしょう」
「……」

本気だろうか? 私が言っているのはブラウンシュバイク公やリッテンハイム侯、そしてリヒテンラーデ侯よりもヴァレンシュタイン元帥を選ぶという事なのだ。それなのにこの人は何も分かっていない。……所詮は軍人で政治には関心が
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