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銀河英雄伝説〜悪夢編
第二十九話 これから必要になるのは喪服だろう
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デ侯の決断が次期皇帝を決めるだろうと言われていますが侯はどちらを選ぶか迷っているそうです。まあどちらを選んでも選ばれなかった方は収まらないでしょう、まだまだ帝国は混乱するでしょうしそれを抑える事になる軍の存在が重みを増すだろうと思います」
「……」

「残念ですね、総参謀長は」
ラインハルトが変な笑みを浮かべている。
「何が残念なの」
「平民ですからね、元帥への昇進は無いだろうし宇宙艦隊司令長官への就任も無いでしょう」
「ラインハルト」
窘めたがラインハルトは止まらなかった。

「姉上だってお分かりでしょう、私達でさえ爵位の無い貴族として蔑まれたんです。総参謀長ならなおさらですよ。このままずっと上級大将のまま馬鹿な貴族の御守りをさせられるのかな、憐れな。退役前に御情けで元帥にしてもらえれば良いが……」
「ラインハルト! いい加減にしなさい!」
私の叱責にラインハルトが不満そうな表情を見せた。

「私は総参謀長を高く評価しているんです。私なら総参謀長を元帥に昇進させて宇宙艦隊司令長官にしますよ。平民だからといって差別などしない。それに貴族達に唯々諾々と従っている総参謀長が歯痒いだけです。私だったら……」
「ラインハルト、口を閉じなさい。辺境警備の一少将が口にする事じゃないわ、身の程を知りなさい」
口は閉じたけど不満そうな表情は消えていない。

「ジーク」
「はい」
「ラインハルトが愚かな事を言わないように注意してね」
ジークが答える前にラインハルトが口を開いた。

「大丈夫ですよ、姉上。姉上の前だから言ったんです、他では言いません。そうだろう、キルヒアイス」
「はい、御安心ください、アンネローゼ様」
「だといいのだけれど……」
溜息が出た。

この子は夫を嫉んでいるのかもしれない、蔑み憎んでいるのかも……。これまではフリードリヒ四世がその対象だった。でも私が夫に下げ渡された事で、フリードリヒ四世が死んだ事でその対象が夫に移った……。相手が皇帝だからこれまではそれを抑える事が出来たと思う。でも夫に変わった今、それを抑えられるだろうか……。



帝国暦 488年 1月 5日  オーディン 新無憂宮  国務尚書執務室 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン



オーディンに戻ると俺とグリンメルスハウゼン老人は新無憂宮にある国務尚書の執務室に呼ばれた。待っていたのはリヒテンラーデ侯の他に軍務尚書エーレンベルク、統帥本部総長シュタインホフの二人の元帥だ。久しぶりに見ると懐かしい感じがしたが気のせいだろう。

「グリンメルスハウゼン伯、この度の反乱軍撃破、真に見事であった」
「有難うございます」
「最終的にはどの程度の損害を与えたのかな?」
国務尚書がグリンメルスハウゼン老人に声をかけると老人が
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