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銀河英雄伝説〜悪夢編
第二十九話 これから必要になるのは喪服だろう
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れも良い。……卿が選んだ司令官達は皆平民か下級貴族であった。貴族達が顔を顰めておったな。随分と文句を言われた」
「申し訳ありません、御迷惑をおかけしたようです」
「いや、構わん。力有る者が上に立つのは当然の事、例え貴族といえど力無き者は滅ぶしかない。どうせ滅ぶのであれば精々華麗に滅びれば良いのだ」
「……その御言葉は」
老人が三度笑った。面白そうな表情で俺を見ている。

「驚いたかの、先帝陛下の御言葉であった」
「……」
「内乱が起きる、その中で力有る者だけが生き延びれば良い、それが先帝陛下の御意志。ブラウンシュバイク公もリッテンハイム侯もリヒテンラーデ侯も先帝陛下の掌の上で踊っているだけの事……」
そして俺も踊らされる一人というわけだ、クソ爺が……。

老人二人がゲームの駒を選んだ。ゲームの名は帝国の覇権。選ばれた駒はブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯、リヒテンラーデ侯、そして俺。多分ラインハルトは途中で脱落したのだろう、駒としては全くの平民である俺の方が面白いとでも思ったに違いない。元帥府を開いて俺に人を集めさせたのもそれが理由だ。

「卿自身が望む未来を作ろうとするのであれば最後まで踊る事じゃ。踊り疲れれて倒れれば未来も消える。どうじゃな、踊れるかな?」
老人が試す様な目で俺を見た。負けられない、そう思った。俺はこの老人に選ばれたゲームの参加者なのだ。
「踊ります、踊り切ります」
老人がまた笑った。

「楽しみだの、卿がどのように踊るのか。期待しておるぞ」
「はっ」
「ブリュンヒルトは卿に譲る、好きに使うがよい、私には必要ないものだ」
「御好意、有難うございます」
感謝するよ、御老人。先ずは白の貴夫人を黒く塗ってやろう。これから必要になるのは喪服だろうからな……。




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