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至誠一貫
第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
四十五 〜南皮〜
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 これが芝居ならば大したものだが、この女子(おなご)には似つかわしくない。
 ……さて、どうしたものか。
「袁紹殿。人払いを願おうか」
「……は?」
 私は振り向くと、
「風、愛里。お前達も外してくれぬか?」
「……わかりました。お兄さん、信じているのですよ?」
「歳三さんがそう仰るなら」
 二人は頷き、部屋を出て行った。
「姫? あたいはどうするんです?」
「猪々子さんも外しなさい」
「へ〜い。姫、何かあれば叫ぶなりなんなりして下さいよ?」
 意味ありげに笑いながら、文醜も出て行った。


「さて、袁紹殿。もう聞く者はおらぬ。存分に話されよ」
「……は、はい」
 が、袁紹は視線を逸らしたままだ。
「如何なされた?」
「…………」
 どう切り出すべきか、迷いがあるのか。
 ……ならば、此方から問い質すしかあるまい。
「袁紹殿。ならば、私から話させていただく。宜しいな?」
 袁紹は、黙って頷いた。
「貴殿が、州牧を熱望しているのは存じている。いや、その事を隠そうともせぬ以上、当然ではあるな」
「ええ、その通りですわ」
「ふむ。貴殿が名家であるが故の宿命、それに華琳への対抗意識で相違ないか?」
「それが、袁家の当主たるわたくしの務め。華琳さんの事も勿論ですわ、あの方に負ける訳には参りませんもの」
「だが、その為の手段とは申せ、今の貴殿はこの渤海郡の民を治める立場にある。その事、本当に得心出来ているか?」
「それは……」
 言葉を濁す袁紹。
「荀ケという謀臣を得て、貴殿の目的には近づいたやも知れぬ。だが、任じられた責務を果たす事なく、己の立身出世のみを成し遂げる。それが、本当に名家たる者の採るべき道であると思うか?」
「わたくしだって、栄達だけを望んでいる訳ではありませんわ」
「だが、行動にそれが現れなくては、他人は貴殿をそのようには思わぬ。華琳はその点、行動し結果で示している。それ故、民の支持も得られ、周囲も華琳という人物を認めるようになる。貴殿と華琳の決定的な差は、そこにあるのではないか」
「……土方さんは、華琳さんを認めていらっしゃいますの?」
「ああ。少なくとも、己の言動と行動に伴う責任から目を逸らす事なく、正面から向き合う姿勢は評価しているつもりだ」
 袁紹はふう、と息を吐くと、
「……では、土方さんは華琳さんの事、どう想われていますの?」
「そうだな。知勇を兼ね備え、為政者としても優れている。平時ならば宰相として優れた才能を発揮するだろうな」
「そ、そうではありませんわ!」
 何故か、妙に迫力があるようだが。
「女として、華琳さんをどう想われているのか、それを聞かせていただきたいのですわ!」
「……特に、何もないな」
「何も?」
「そうだ。確かに華琳は才色兼備の
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