マザーズロザリオ編
episode2 俺の使う呪文は
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ぜ……)
振り返ってその呪文の対象に選ぶのは、ユウキ。あいつはああ見えて、目の前のこと以外には妙に鈍い所がある。幾つかのお邪魔呪文をかけてもそれが直接効果を及ぼさない限りは気付くまい。彼女が飛び立つ寸前に呪文は成功し、その闇妖精の姿が、視界の中で浮かび上がる様に鮮明になる。
(……よし)
飛び去っていくユウキ。それに引き摺られるように連れていかれる、アスナ。皆がそのあっという間の人攫いを呆然と見送っていき、その姿が普通では見えなくなる距離まで離れ、今日のお開き(本当はこれでもう辻試合はおしまいなのだが)を皆が知って三々五々に散っていく。
その中に紛れて、俺も飛翔。
苦手なりに訓練した(モモカとブロッサムが嫌だっつって言っても嫌ってほど鍛えてくれた)結果、空戦こそ苦手なままだが、直線の随意飛行はかなりの速さで出来る様なくらいにはなっていた。そもそも直線での随意飛行に最も必要なのは、その速度に耐えうる度胸だ。それなら、SAOで敏捷一極で鍛えた俺なら造作も無い。
(……いける。追いつける)
見えるはずのない距離の中でも、はっきりと見えるその背中。猛スピードでこの二十四層の湖を南下していき、外周部へと向かっていく、紫と青の妖精の羽。
俺は慣れない羽を必死にはばたかせ、その背中を全力で追いかけた。
◆
ぎりぎりだった。本当に本当に、ぎりぎりのタイミングだった。あと数秒遅かったら……というか、このアインクラッド第二十七層の上空を彷徨うMobである『ガーゴイル』連中が彼女らの進路を妨害してくれなければ、間に合わなかっただろう。
二人を射程の限界に捉えて放つのは、幻属性の魔法と同時に上げている闇魔法の呪文、《エアヴェスドロップ》。この単語が「盗み聞き」を意味する「eavesdrop」から来ているなんて知ってる奴いるのか? と言いたくなるが、その名の通り付着させた対象周囲の音声を聞きとれる…要するに盗聴だ。
(どんどんストーカー化していくなあ、俺……)
標的となるユウキに再び呪文をかけて、闇に紛れる様に空中で隠蔽。
今回もなんとか気付かれずに効果が発動したらしい。うん、変態の汚名はなんとか逃れられたようだな。さすがにあの天真爛漫なユウキでも、ここまでやったら笑って許してはくれまい。それ以前に、せっかく普通まで持ち直したシウネーさんの信頼が地の底突き抜けて大暴落してしまう。
『―――まずはボクの仲間を紹介するよ!こっち!』
やれやれと溜め息をついてネガティブな想像をしていた俺の耳に届いたのは、弾むようなユウキの声。ちらりと見やれば、その体は俺の視界の端で、主街区である《ロンバール》の宿屋の一つへと入っていった。
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