マザーズロザリオ編
episode2 俺の使う呪文は
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
(『閃光』、アスナ……あいつ、水妖精になったのか……)
このALOでは、SAOデータ引き継ぎ組は基本的にあの世界と同じ外見……つまりはリアルと同じ外見をしている為、何らかのアイテム(例えばこのALOで俺『ラッシー』が付けている艶消しの黒のネックウォーマーの様な)を装備して顔を隠さなければ、簡単に正体が割れてしまう。
しかし、どうやら相変わらず『閃光』殿は自分の外見への配慮が欠けておられるようで、その絶世の美貌を惜しげも無く晒していた。その凛々しい外見は、まさに水の精霊にふさわしい神秘的な青によく映えた。
だが。
(ま、中身は火妖精も仰天の苛烈な戦士だが、な……)
あのかつて『狂戦士』と謳われた彼女の性格を知っていれば、誰もがそう言うだろう。
すらりと剣を抜いて構えるアスナを見て、襟巻の下の口だけで小さく苦笑する。あくまで、周囲に悟られないように、だ。アスナが来たということは当然この人込みの中にキリトやリズベットもいるだろう。今は正直面倒なので、顔を合わせたくは無い。
「わっ!」
誰かに押されたのか、ふらふらと前に進み出るアスナを見て、ユウキが微笑む。
「あ、お姉さん、やる?」
「え、えーっと……じゃあ、やろうかな」
まるでドジっ子のようなアホなやりとりを得て二人が剣を構える。
当然、アスナが選ぶのはSAO時代と同じ、地上戦。
(油断するなよ、ユウキ……その嬢ちゃんは、なかなか強いぜ? 俺を倒せるくらいには、な)
湧きあがる歓声の中、俺は遠い昔のデュエルを思い出していた。途方も無く美しく、強く、気高かった、『閃光』の剣技。俺なんかでは及びもつかない、キリトと並んであの世界を救った、『勇者』の一人に恥じない力。
デュエルが始まった瞬間に地を蹴っての突進突きは、あの頃と変わらない鋭さ。
だが。
(……勇者は、お前だって同じだろ? 『絶剣』)
そのアスナの薄水色の剣が鋭くユウキに弾かれるのを、俺の目はしっかりと捉えた。
◆
「うん、おねーさんに決めた!」
デュエルが終わると同時のその言葉に、俺は即座に人ごみを離脱してやっと慣れ始めた呪文の詠唱。むやみなレベル上げでかなりの熟練度に達している幻属性の魔法、《シェイド・サイト》だ。視力の強化……正確には「指定対象の移動を追尾し、隠蔽や遮蔽物、明暗エフェクトの効果を一定まで無効化する」というストーカー御用達……もとい、かつての《追跡》スキルの魔法版といった効果の呪文。
正直人並なモラルを持ち合わせている(と、自分では思っている)俺では気が引けるが、今回ばかりはしょうがない。
(悪いな……使わせてもらう
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ