暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜生まれ変わりのアレス〜
学校長の思惑
[3/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
たと」
「信じられないだろうが、それが事実だ。不本意そうだな」
「正直」
 頷いて、スレイヤーは生やした口髭を苦々しそうに撫でた。

 白髪は混じるものの、それまで軍人らしく若々しく見えた表情が若干老けて見える。
 疲れているのだ。
「この学校に赴任して、さすが士官学校――優秀というものだけであれば、幾らでもいます。どの学年の主席でも、兵卒あがりの私ではとても勝てないでしょう。しかし……」
 言葉を止めたスレイヤーはゆっくりと頭を振った。
「それでも彼らは子供なのです。まだ二十歳にも満たぬ学生。大人気ないことかもしれませんが、彼らが論戦を挑んできたところで一蹴できるでしょう。それは経験もあるでしょうし、大人のずるさかもしれない。だが」

 差したのは机上に置かれたレポート用紙だ。
「こいつは違う。そこに経験も大人のずるさも兼ね備えている――下手をすれば一撃で、喉元を噛み千切られる」
「一兵卒からその地位まであがった君が学生ごときを恐れるのかね?」
「学生だからこそですな。大人であれば称賛はあれど、恐れはしなかったと」

 シトレとスレイヤーは見つめあった。
 時間にすればほんの数秒であっただろう。
 だが、そのわずかな時間で視線を外したのはシトレだ。
 話題を変えるように手に持ったレポート用紙を振って見せた。
「ちなみにもう一つアレスが書いたレポートがあるのだが、見てみるかね」
「ええ。これを見る限り、見るのが恐ろしいですがね」

 掴むように受け取って、スレイヤーは片眉をあげる。
 フェーガンとは違い、印字されたそれに目を通す。
 睨むようにそれを見て、次にシトレに視線を向けた。
「こいつは我々を馬鹿にしているのです?」
「そう思うかね?」
「戦術シミュレーターの多人数化を書いていますが」

 そこに書かれていたのは、戦術シミュレーターを使った授業に対する改善意見だ。
 現在戦術シミュレーターは一対一が基本である。
 だが、それを参謀や分艦隊司令など複数の役職で分けてシミュレーションをしてみればどうだという意見であった。
 戦術シミュレーターは有効だという意見がある一方で、所詮遊びだと言う意見も根強い。

 何より一つの戦闘が一時間程度で終わるわけもなく、実際の時間に即した戦闘にすれば早くて半日――遅ければ丸一日を経ても終わらないからである。とても授業の一環としてできるわけもなく、できるとすれば時間を早めるしかない。
 そうすると一時間が十分程度――実に六分の一に縮まるわけだが……。

「多人数化すれば、時間の短縮は出来なくなるでしょう。それでいて、戦術シミュレーションはゲームだという意見がある状況では、授業を潰してまで行うのは難しいでしょうな」
「だが、その利点は面白いと思わな
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ