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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜妖精郷と魔法の歌劇〜
英雄達の凱旋歌
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ぜひゅっ、ぜひゅーっ、とレンはふらつく足を必死で支えながら、ぼやける視界の向こうにいる二つの影を喰い殺さんばかりに睨みつけた。

脳裏ではどぐん、どぐん、と脳の悲鳴のような鼓動が聞こえる。

ごぷ、と吐き気が時々襲い、目眩が絶えず平衡感覚を狂わせる。

───や………ば……。さすがに慣れない心意防御を全力でやったのはまずかった。一気に体力………持ってかれた。

ぐらり、と体が傾く。それを必死に支える。

深呼吸をするとようやく焦点が定まってきて、数十メートルほど先にある大木の上に立つリョロウとセイの姿を視認できた。

同時に、両手の拳に僅かな過剰光がゆらりと纏わりつく。

心意技とも言えない、心意の力。

普通の状態のレンでは、ありえないくらいの量の少なさだ。

「今は……、これが限界か…………」

集中(コンセントレーション)が、限界まで落ち込んでいる。

心意の力を使用するに当たって、重要なファクターは想像と投影である。

本能レベルで、投影したい物のイメージを脳裏で描く。そして、それを使って現実と因果律さえも捻じ曲げるほどの力を現実に投影するのだ。

だが計二年と二ヶ月、そして二ヶ月の間一睡もしていないほどのダメージを蓄積している今の状態なら、ほとんど集中できるはずもない。

もともと、人間というのは奇跡の上に成り立っているジグソーパズルのような物だ。

一つ一つのピースが修復はできても量産はできない、かけがえのないパズル。

病気というのはそのピースにヒビが入る程度の物。

それだけならば修復できるだろうが、睡眠というの物はその重要なピースその物なのだ。それを失うと言うことは、人間という生物のジグソーパズルが根幹から瓦解するということなのだ。

人間は長い間睡眠を取っていないと、かなりの確立で死に至る。

最初は赤血球の生成量が減り始め、そのうち身体全体が衰弱し始めることになる。最後には、脳機能が停止することになる。

《疲れ》という物は、地味に見えるが人間には充分に致命的なもので、脳が発する危険信号なのだ。

───これ以上戦いが長引いたら、こっちに得はない……か。

はぁ、とレンはため息をつく。

この世にある全てを憂うように。

次いで、大きく息を吸う。

ミシッ、と足元の地面が悲鳴のように音を立てる。

そして―───

「行くよ」

一言だけ、短く言った。

ドゴンッ!!!と砲弾のようにレンの体がスタートする。瞬きする間もなく、枝の上に立つ二人の背後に回った。

反応させる間もなく、ワイヤーを展開する。

鈍い音とともに、硬い手応えが手の中に伝わる。

二つの影が、弾かれたように吹っ飛んだ。だが、明らかにダメージの
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