暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
外伝その1  薔薇園にて
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初
「騙したと言いますと?」
「私にエル・ファシルに行ってレベロ議長の選挙の応援をしろと嘘を吐いた。本当は最初から私をエル・ファシル公爵にするつもりだったんだろう」
あらら、そういう事? そうだったの?

「嘘じゃ有りません、本当に最初はレベロ議長を公爵にするつもりだったんです。そうでしょう、レベロ補佐官」
「まあ、そうだな」
親っさんが声をかけるとエル・ファシル公爵の取り巻きの一人が曖昧に頷いた。なるほど、公爵に気を取られて気付かなかったけれど良く見ればレベロ議長だぜ。

「しかし上手く行かないと分かったので公爵閣下にお願いしようという事になったのです。ただ公爵になってくれと言っても嫌がるのは分かっていましたからね、説明を分担したのですよ」
「……分担?」
公爵は喰い付きそうな目で見ている。

「私が前半を説明してレベロ補佐官が後半を説明するという事です。嘘は吐いていませんよ」
公爵がレベロ補佐官に視線を向けると補佐官が肩を竦めた。公爵が腹立たしそうにまた親っさんを睨んだ。
「結局は私を嵌めたんだろう、君は」
まあ、そうだろうな。ルーデルやウルマンも困った顔をしている。

「人聞きの悪い事を……」
親っさんが苦笑を浮かべた。
「事実だろう」
エル・ファシル公爵が言い募ると親っさんの苦笑が更に大きくなった。

「どうやら公爵閣下は私の所為で公爵になってしまったと非難しておいでですがエル・ファシル公爵に立候補したのは閣下御自身ですし閣下を公爵に選んだのはエル・ファシルの住人です。私を非難するのは聊か八つ当たりと言うものでその御身分に相応しい行為とは思えません」
公爵閣下がぐっと言葉に詰まった。公爵の取り巻きが必死で笑いを堪えている。忌々しそうに公爵が連中を睨んだ。親っさんってほんと良い性格してるよ。

「私は親切な人間なんです。レベロ補佐官からはこれで安心して公爵を辞められると喜ばれましたしエル・ファシル住民からも良い公爵を選ぶ事が出来たと喜ばれました。陛下も閣下を臣下に持つ事が出来て大喜びですよ。閣下をエル・ファシルへ行くようにと勧めた事は本当に良い仕事でした」
親っさん、そんな火に油注がなくても……。親っさんは嬉しそうに笑みを浮かべている。もう完全に遊び始めたな。公爵の取り巻きも呆れ顔だ。

「私を犠牲にしてかね」
「犠牲? 冗談はやめてください、一番恩恵を受けているのは公爵閣下ですよ」
「何を、馬鹿な!」
エル・ファシル公爵が吐き捨てた。駄目だよ、そんな事しちゃ。親っさんが喜んじゃうじゃないか。

「実入りの良いお仕事に就く事が出来たではありませんか。年金だって増えますから豊かな老後が保証されますよ。それに仕事なんてみんな下に押し付けているんでしょう? 閣下御自身は好きな時に紅茶を飲んで昼寝を
[8]前話 [1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ