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銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
外伝その1  薔薇園にて
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尽くす事を誓います”って言うと黒真珠の間はシンと静まった。金髪は満足そうだったな、“うむ、頭領の言葉、嬉しく思う”なんて言ってたから。まあ戴冠式の最大の見せ場だろう。

俺が戴冠式を思い出していると
「不幸な方でしたね、フリードリヒ四世陛下は」
と親っさんが呟いた。ちょっと驚いた、そんなこと考えた事は無かったからな。親っさんは薔薇の花を見ている。
「不幸、なのですか、皇帝が?」
ルーデルが問い掛けると親っさんが頷いた。

「不幸だと思いますよ、酒に溺れる事も出来ず女に溺れる事も出来なかった。行きつくところはこの薔薇園だったのですから、どんな想いで薔薇を育てていたのか……」
親っさんの表情は寂しげだった。同情しているのかな、フリードリヒ四世に。俺なんてフリードリヒ四世には反発しか感じないけど……。ウルマン達に視線を向けたけど皆困ったような表情をしている。多分皆俺と同じ想いだろう。

「親っさん、戴冠式でグリューネワルト伯爵夫人を見ましたけど凄く綺麗な人ですね。俺、あんな綺麗な人見たことないですよ」
「ホント、あんな綺麗な人見た事有りませんや。キルヒアイス提督は婚約したんでしょう、羨ましいですよ」
「親っさんが伯爵夫人を説得したからな」
俺が話を変えるとウルマン、ルーデルがそれに続いた。ホント、羨ましいぜ。

伯爵夫人は最初は赤毛と結婚するのは嫌がったらしい。正確に言うと赤毛の事は嫌いじゃなかったらしいが結婚する気は無かったそうだ。皇帝の寵姫だったからな、遠慮が有ったんだろう。そいつを金髪に頼まれて親っさんが説得したってわけだ。金髪も伯爵夫人の事が気になっていたようだな、親っさんが説得したと報告した時は随分と喜んでいた。

「親っさん、この薔薇園ですけどどうなるんでしょう、フェザーンに遷都したら」
ヴァイトリングが尋ねると親っさんはちょっと首を傾げた。
「多分このままでしょうね、持って行くわけにもいかないでしょうから。誰かが管理する事になると思いますが……」
そうか……、このままか……。遷都したら人も少なくなる、誰も鑑賞しないなんて勿体ないな。せっかく綺麗に咲いているのに……。

「辺境にも欲しいですね、こういう美しい場所が。薔薇園とは限りませんが人の心を癒す、或いは感動させる場所が欲しいと思います」
親っさんが薔薇の花を見詰めながら呟いた。親っさん、俺と似たような事を考えていたんだ。ちょっと嬉しくなった。

「作りましょうか」
親っさんの言葉に“えっ”と思った。俺だけじゃない、皆親っさんを見ている。
「辺境も少しずつですが豊かになりました。仕事以外にも人々が目を向ける場所が有って良い。植物園、動物園、遊園地、体育館、競技場、映画館、美術館、博物館……。皆の生活を豊かにするだけではなく周辺宙域からの観光客を
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