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至誠一貫
第一部
第三章 〜洛陽篇〜
二十七 〜江東の虎〜
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だが、修羅場を潜り抜けてきたという点では、他の官軍には引けは取らぬ筈だが?」
「何だと? 貴様、もう一度言ってみろ」
「いくら、兵が精強でも、率いる将でその強さは変わる。貴殿は、そこをわかっておらん」
「おのれ! 私を馬鹿にするか!」
 疾風も、引っ込みがつかないようだが、そろそろ止めるとするか。
「そこまでだ、両者とも。言い争いをしても始まらんぞ?」
「歳三の言う通りよ。春蘭、もう一度だけ言うわよ。私の話、聞いていたのでしょうね?」
「うう、華琳さまぁ……」
「……は。申し訳ありませぬ」
 夏侯惇は涙目になり、疾風は少し顔を赤くして俯いた。
「全く。ところで郭嘉、程立。策は立ててあるのかしら?」
 華琳は、我が軍師二人に話を振る。
 稟と風は一瞬、顔を見合わせてから、軽く頷いた。
「もう少し、状況を探ってみた方がいいかと思います。疾風の調べを疑う訳ではないのですが」
「叩くなら、一網打尽にしないと意味がありませんしねー」
「そう。歳三、貴方はどうなの?」
「二人の判断は誤っておらぬであろう。異論はない」
 華琳は不満そうだが、ここは慎重を期すべきであろう。
「けど、あまり悠長な真似は出来ないわよ? その間にも他の村が襲われる可能性があるんだし、糧秣だってあまり余裕はないもの」
「そこで、提案なのですが。劉曄殿と疾風、協力して敵情を探ってみてはどうでしょうか?」
「確かに、別々よりも効率は良さそうだけど。私は別に構わないわよ?」
「うむ、私も賛成だ。疾風、良いな?」
「はっ。劉曄殿、よしなに」
「……諾」
 方針が決まれば、後は行動するのみ。
「あのような烏合の衆、我が一撃で粉砕してやるものを」
「……春蘭。貴女の武は認めるけど、もう少し将としての自覚を持ちなさい」
 華琳の苦労が窺えるな、あれでは。


 数刻後。
 華琳と共に待機していると、劉曄がやって来た。
 疾風のように自ら動くのではなく、配下を扱うのを得手にしているようだ。
「……謎の官軍、見つけました」
「謎の官軍?」
 私は、思わず華琳と顔を見合わせた。
「どういう事、紫雲?」
「……わかりません。警戒、厳しくて」
「貴女の配下でも近寄れない程って事? あり得ないわ、そんな事」
「ふむ。劉曄、疾風はその事を知っておるのか?」
 コクリと、劉曄は頷いた。
「……知らせたら、自分で確かめる、と」
 ……あの性分では、やむを得まい。
「それで、位置はどのあたりなの?」
「……この辺り。数は、五千ぐらいです」
「私の軍と同じ規模か。でも、この辺りにいる官軍、ね……」
「心当たりはないのか?」
「数だけなら、ね。けど、その隙のなさが気に入らないのよ」
 そうかも知れぬな。
 華琳が、それほどの一隊を把握して
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