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ファイアーエムブレム〜ユグドラル動乱時代に転生〜【外伝】
とある騎士の昔語り---その4---
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 ……ヴォルツの元へ急使が向かっていたその最中(さなか)、村は平穏に包まれていたかと問われれば、さにあらず。



 討伐隊の到着に安堵してへたりこむ者が居た。
 それはつまり、" 何か " があったことの証左であろう。
 完全な証言者は存在しない。
 なぜなら……



 回収されたマノンとエリクだったものを納める棺など、すぐに用意できるはずもなく、かといって人目につくようなことなど及びもつかず、ひとまず仮棺のようなものがこしらえられ、弔いの儀式が行われるまで安置される運びとなったのだが………
 村長宅は対策本部となり使者の接受をはじめ他村からの応援の滞在先となるため、マノンの親族の元で葬儀の用意は進められていた。
 当然ドロテはそこに預けられていたが、熊害対策のために村長宅へ詰めている者達に軽食や飲料の差し入れに向かうおば(マノンの兄の配偶者)を手伝うため、そこを離れていた間にそれは起きた。
 その時、上は十を少し超えたばかりをはじめ四人の子供、それにマノンの母である祖母、守り手としてマノンの兄である家主がおり、そして家人夫婦とその間の子が一人といった具合に九人もの人間がいたのだが………生き残ったのは五名、その中には重症者が二人も居り、予断を許さない状態が続いている。
 家人夫婦は己の子では無く、主人の子の内二人を連れて村長宅へとほうほうの態で逃げ延びてきたことからも、事態が逼迫していたということを物語っていた。
 衝撃を受けた村人達が慌ててそこへ駆け付けたが既に襲撃者の姿は無く、幾つもの血だまりやそこに見受けられる肉片や骨、そして獣の排泄物の臭気に胸が悪くなる者、思わず嘔吐してしまう者……それを咎める者もいたわる余裕のある者も見受けられない惨状であった。
 そんな中、息があったのはマノンの兄だけであったのだが……
 息があったという表現だけはあり、彼の顔面の半分はぐずぐずの肉塊のようになっており、噛みつかれたとも引き裂かれたとも定かではないが腹部からはみ出た内臓、短槍を握りしめた手首よりも先の部分だけが転がっていたりなど、凄惨さを突きつける痕跡が見受けられた。

「これなら夜盗や山賊のほうがよっぽどマシだ……」

 絞り出すように、そうひとりごちた誰かの言葉を否定する者は誰一人として居なかった。

 半壊した屋敷のあちこちの柱や壁には爪でつけられたであろう一つ一つが大人の指一本よりも尚太い傷跡、それに大きな足跡が幾つも残されていた。
 それゆえ村人は見張りを立て篝火をかかげ、応援を待ち望んでいたのであった。





 翌朝までにマノンの兄と家人夫婦がなんとか連れ出せた子のうちの一人---頭部に重傷を負っていた---は息を引き取り、ひとまずは村人全員をトゥワロ村にまで避難させることを定めた
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