暁 〜小説投稿サイト〜
渦巻く滄海 紅き空 【上】
五十六 贖罪
[2/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
には紫の結界が張り巡らされていた。

それはナルトによる幻術を施した結界である。


音声すら遮断するこの結界術は以前にも使っている。
波風ナルとの接触時と、一尾・九尾を鎖で戒めた際だ。

前半はダンゾウに対する用心。神農との闘い後、木ノ葉の里に帰還して以来、ナルトはよく『根』の者に見張られていた。どうやら不穏な動きを怪しまれ、九尾狙いかと思われたらしい。
そこでナルと再会する前にこの結界を施しておき、その上で「木ノ葉が憎くないの?」と訊ねたのだ。彼女が「憎い」と答えた場合、ダンゾウに危険視されるのを危惧したのである。

後半は、木と同化していた者への警戒。ダンゾウと別れた後、秘かに感じた視線にナルトはすぐさま気づいた。おそらく独断による監視だろう。だから敢えて我愛羅とナルの戦闘に一切手を出さなかった。まるで人柱力から尾獣が出て来るのを待っているかのような素振りを見せ、且つ鎖を用いる事で尾獣の捕獲と見せ掛けたのだ。
また、音声を遮断した結界のおかげで、『九喇嘛』との会話は聞こえなかっただろう。


現に今、火影の身を案じる暗部の眼には、未だ変わらぬ紫の結界が映っていた。











「…八年ぶりですね。三代目火影様…」

静かな声。
穏やかなその声音はどこか聞き憶えがあった。
面立ち。
その優しげな顔は、聳え立つ火影岩の一つによく似ていた。
眼差し。
突き抜けた空と深き海底を思わせる青き双眸はやはり見覚えがあった。
そう、名は――――…

「…ナ…ルト…」


辛うじて絞り出した声は掠れている。猿飛ヒルゼンは己が目にしている現実を信じられなかった。

動揺するヒルゼンに対し、微塵も取り乱していないその少年はにこりと微笑んだ。しかし寸前とは一転した冷徹な眼差しで、ヒルゼンの背後を見据える。
「…積る話はそこの部外者がいなくなってからにしようか」

鬼の如き形相にも全く怖気づく様子もなく、むしろ憎んでいるかのような風情で彼は死神を睨んだ。
直後、一瞬で死神の傍に接近。捕らえられているヒルゼンの魂を苦々しげに見遣る。
触れられるはずもない死神の首を片手で掴んだかと思うと、少年は問うた。

「お前は神か?」

次の瞬間、少年と死神の周囲を黒い炎が取り囲んだ。何が起きているのか判断出来ぬヒルゼンを尻目に、少年は猶も問い掛ける。

「お前は神か?」

少年の問いに死神は僅かに頷いたようだった。だがその返答は彼にとって最も気に入らぬ答えだったらしい。青き瞳を細める。
「…違う。お前は人が生み出した術に過ぎない―――神ではない」


刹那、何かが死神から抜き取られた。【屍鬼封尽】の術を発動中のヒルゼンにも、今度はソレが何か理解出来た。

それは
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ