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剣風覇伝
第十四話「因果」
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 はじめはただ泣き叫ぶことしかできなかった。だがタチカゼは激しい心の葛藤の中でだんだん固まっていく自分の心を見出した。そしてしばらくの沈黙の中、やっと立ち上がりその足は城へと進んだ
。そこには主をなくした哀れな女たちが待っていた。彼らは伯爵の傀儡がとけて元の人格に戻っていた。
「伯爵は?どうした」
「それが、教会で伯爵がいつもの祈りをしているととたんに伯爵の頭の上に黒いもやのようなものがやってきて、そこから伯爵の娘のルシア様の声がして伯爵は急に泣き崩れたと思ったら何かが伯爵を貫いたかと思うと、灰になってしまったのです」
「そうか」
「あなたは、たしかタチカゼ様でしたね。あのご無礼をお許しいただければ私たちはこれからいったいどう生きればよいでしょう?」
「あなたたちは今は吸血鬼だが同時に町の人間たちの娘であり孫であるのだろうなら会いに行ってはどうか?見よ、空はもう日が沈む、夜の間は、町で人間の娘として暮らし、朝になればこの城に戻ればよい。町では朝になってしまったら隠れるべき暗闇がすくないだろうからな」
 娘たちはそれを承諾した。長い間、伯爵の下にいたのは自分が化け物になってしまったからだったのだが、娘たちももう寂しさを抱いて日々を過ごすのに疲れていたのだ。
 タチカゼは娘たちと共に城から町へ降りた。町では町民たちがタチカゼを待っていた。
 タチカゼは「伯爵は死んだ」とだけ伝え、その場を去った。
 だが、タチカゼはひとつ重大なことを伝えるのをしなかった。
 それは、娘たちはもうヴァンパイアから戻らないということだった。だが町民も娘たちもその再会の喜びに浸りきりそれらのことを忘れていた。タチカゼは空虚な心で考えたのだ、娘たちはもう人間にはもどれないならあなたたちもいっそ、人間をやめてしまえばいい。タチカゼはその場を去るとき、確かに聞いたのだ。ある町民が言った。
「ああ、この娘が戻ってくるなら私は何者になってもかまわない」
 確かにそう言った。
 最初は女たちも町民たちも喜びで毎日が輝くようだった。
 ヴァンパイアとなった娘たちはしばらくは普通の娘として振舞っていたがその性には、勝てなかったのだ。そう人間の血を求めるという性に、そして娘たちは月夜の夜にどうしようもない飢えに襲われ町の人間を片っ端からその生き血を吸ってしまったのだ。
 さてそしてなにが起こったか、町民たちがあれほどまでに嫌悪し、恐れた吸血鬼に最後は町民たち全てがそうなってしまったのだ。そのおかげで今ではあの町の者たちは、ほかの町から恐れられ嫌悪され、おまけに日の光の中を歩けない。その町の名産の青金も銀にふれることさえできなくなり強い剣も槍も作れなくなり、それによって絶えず他の国の脅威に怯えるようになった。
 だがもう一方の真実にも気づく、そうヴァンパイアの血に宿る力だ
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