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アイーダ
第三幕その五
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第三幕その五

「共に行こう。運命だけが支配する荒野に」
「いえ、私の祖国へ」
 アイーダはそうラダメスに言う。
「共に参りましょう」
「いや、それは」
 ラダメスはそれだけは拒もうとする。祖国への罪は犯そうとはしなかった。それだけはできなかった。今の彼は。しかしアイーダは言うのだった。
「緑の満ちる国へ」
「果てしなく続く砂漠の先で砂を床として二人だけの場所を目指すのだ」
 それがラダメスの願いだった。せめてもの。
「星達が澄み切った輝きで導くままに。それでは駄目なのか」
「香りに満ちる祭壇と花の芳香に満ちた大地の中で二人の喜びを」
「駄目だ」
 エチオピアに寝返ることだけは拒む。どうしても。
「爽やかな谷間と緑の平野を婚礼の場所として。そして二人で」
「それだけは」
 ラダメスはそれを拒む。
「それだけは」
「では仰ってください」
「何をだ?」
「貴方が何処を使ってエジプトを出られるおつもりなのか」
「道をか」
「はい」
 そこが問題なのであった。エジプト軍が通る道でもあるからだ。アイーダはそれを聞き出そうとしていた。本意に反して聞こうとしていた。
「宜しいですか?それだけは」
「わかった」
 最早エジプトを出るつもりであった。その伴侶に今道を教える。それだけの筈だった。
「ナパタだ」
 彼は言った。エジプトとエチオピアの間にある峡谷である。そこを言ってきた。
「そこには明日までは人が配されてはいない。そこを使えば」
「よいのですね」
「そうだ」
 ラダメスは言った。
「そこを使えば」
「よし、そこか」
「!?」
 その声に気付き顔を向ける。あの大柄な黒い肌の男が出て来た。
「貴殿はエチオピアの人質の」
「そうだ」
 ラダメスの前に現われて述べてきた。
「私はアイーダの父にしてエチオピアの王だ」
「馬鹿な!」
 ラダメスはそれを否定する。エチオピア王は死んだ。その筈だった。
「王は死んだ筈だ。どうして」
「それは私が言ったことだったな」
「ではまさか貴方は」
「その通りだ。君は今我々にそれを教えてくれたのだ」
「それでは・・・・・・」
 強張った顔でアイーダを見る。アイーダの顔が今壊れようとしていた。
「い、いえ」
 狼狽する顔でラダメスに述べてきた。
「私は。その」
「そんな・・・・・・では私は」
「信じて下さい!」
「我が娘アイーダの愛は本物だ」
 アモナスロはそれは誓ってきた。
「だからこそ私は娘に頼んだのだ。王としてな」
「貴方が王ということはアイーダは」
「そうだ、エチオピアの王女だ」
 アモナスロの口から発せられた言葉はラダメスの全身を撃った。雷のように全身を貫く。
「馬鹿な、そんなことが」
「いや、これは紛れもなく
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