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アイーダ
第三幕その三
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第三幕その三

「それならばエジプトの者達が我等が国を焼き尽くす」
「エチオピアを!?」
「そうだ、我等が祖国をな」
 またそれを言う。心の奥にまで言うように。
「彼等に勝つことはできぬ。決してな」
「ではエチオピアは」
「終わりだ」
 またアイーダに告げる。
「滅ぼされる。美しい国が我等の血で赤黒く染まる」
「そんな・・・・・・」
 その言葉はアイーダを絶望に追いやるのに充分であった。愕然として倒れんばかりになる。しかしアモナスロはそんな娘を許しはしない。さらに言うのだった。
「国には人がいなくなり亡霊だけが満ちる」
「ああ!」
「その者達がそなたに言うだろう。国を滅ぼした女だと」
「何と恐ろしい・・・・・・」
「恐ろしいな?」
 一瞬で父の顔になった。
「祖国を滅ぼしたくはないな」
「はい」
 恐ろしさに身を震わせながらこくりと頷く。
「それだけは。何があっても」
「そうだ」
 優しい顔になっていた。その顔で述べる。これは芝居ではなかった。王である彼と父である彼が共にいる結果であった。それだけのことだった。
「ファラオの奴隷ではないな?」
「ええ」
 父の言葉にこくりと頷く。
「私はお父様の娘」
 顔を上げて言う。
「それ以外の何者でもありません」
「ではいいな」
「わかりました」
 また父の言葉に頷く。
「それでは」
「頼むぞ」
 娘を包み込むようにして囁いた。
「エチオピアの為にな」
「エチオピアの」
「そうだ、祖国の為に」
 アイーダに対して言う。
「よいな」
「わかりました、いいな」
「はい」
 王の言葉にこくりと頷く。頷いた言葉は苦渋に満ちたものになっていた。だがそれを拒むことはアイーダにはできなかった。エチオピアの者として。
「お任せ下さい」
「うむ」
 アモナスロはその場を後にした。そうしてアイーダ一人になった。
「アイーダ、遂に見つけた」
 そこにラダメスがやって来る。そして彼女に声をかけてきた。紫苑の静かな夜の中に二人だけとなる。その中で二人話をするのであった。
 だが彼女はラダメスから顔を背けている。彼の顔を見ようとはしない。
「どうしてここに」
 ラダメスに対して問う。
「王女様は」
「私が見たいのは御前だけだ」
 今自分の気持ちをはっきりと述べてきた。
「だから御前を今」
「嘘です」
 アイーダは顔を背けてラダメスに言った。
「それは。だから」
「いえ、嘘です」
 しかしアイーダはそれを否定する。
「貴方は私を愛してはいない。だから王女様と」
「そなたへの想いは本当だ」
 それでも彼は言う。顔が必死なものになっていた。
「偽りの誓いで御自身を穢されてはなりません」
 そうラダメスに告げる。やはり顔
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