暁 〜小説投稿サイト〜
あー、君。今日から魔法少女ね。
肉体派魔法少女
[2/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初
だ。もしかすると、この体の持ち主もそうであったのかもしれない。
寧ろそうでなければ、強くなりたいなどと願いはしないだろう。
自分の弱さに耐え切れず、願いに逃げてしまった少女。
その若さを鑑みれば、私は彼女を責められはしなかった。私だって逃げたい。
逃げ出せるものならばそうしたい。しかし、出来ない。
ならば戦うしかないのだ、現実と。そうして人は、大人になっていく。
絶望が少女から女へと至る道だなんて、酷い冗談だ。
何もかもを恨み、絶望に屈し膝を折ることが成長だって?
ふざけている。目の前に聳えたつ巨体を見れば、なおさらそう思えた。

 身の丈ほどのペンを振り回し、落書きを量産しては笑う魔女。
太い手足をした、肥えたぬいぐるみに見えるその姿。
周囲には空き缶や菓子袋に似た絵が散らばり、カサカサと耳障りな音をたてている。
醜い。ただそう思った。その思考が相手に伝わったかは定かでないが、魔女がこちらを向く。
『アハ、ギャハアハギハハハハァアハ!!』
 ギリギリそう聞き取れる、潰れた蛙の笑い声。
耳から伝わる不快に眉を顰めると、魔女は酷く愉快そうに笑い、ペンを振り下ろした。
慌ててその場から飛び退り、砕けた地面に身を打たれながら転がる。
痛む体を庇いつつ立ち上がると、先ほどまで立っていたところにクレーターが出来ている。
血の気が引いていく音が聞こえた気がした。それ程に、魔女の持つ力は大きかった。
まともに戦おうだなんて、考えるべきじゃ無かった。
私は魔女に背を向けて、一目散に駆けだした。
大層なことを頭で考えておきながら、結局逃げている自分に胸が痛んだ。

『ヒャアァァァアアア!ィヒイイイイイイィイイ!!』
 何が面白い、この化け物め!!振り向いてそう叫んでやりたかったが、声が出なかった。
喉がカラカラに乾いている。全身に吹き出した汗の所為で、体の水分が干上がってしまった。
とにかく走り続け、背後から聞こえる音が遠ざかったところで反転、息を整える。
膝に手をついて仰ぎ見た魔女の巨体は、不快な笑いが小さく聞こえる距離にあった。
思ったより遠ざかっている。
魔女は十メートルもありそうな巨体だから、リーチの点ではこちらが劣るはずなのだが。
そう考えると、もしかしてこれは……。
閃きが胸の内を駆ける。試しに強く念じてみれば、それは確信へと変わった。
やれる。未だに恐怖を残しながらも、希望が心に小さく灯る。
もう逃げるのは止めにして、立ち向かうべき時が来たのだ。

 二転三転、定まらなかった心が、在るべき場所に落ち着く。
たったそれだけで全身の血が、燃えるように沸き立つ。
それは駆け巡る魔力の見せた、昂揚感からくる幻だった。
しかし、今このときに感じている熱は、決して消えることは無いだろう。
足が強
[8]前話 [1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ