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銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第三十六話 主導権
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ポレヴィト星域からランテマリオ星域にかけては有人惑星が存在しません。民間人に累をおよばさぬためにも反乱軍はこの宙域を決戦場に選ぶ以外にないでしょう。小官は確信を以てそう予想いたします」

彼方此方で頷く姿が有る。だが俺は頷けない、どうにも嫌な予感がする。目の前にあるグラスを睨んだ。会議が始まる前に用意されたグラスには水が入っている……。イゼルローン要塞を落した事は予想以上に影響が大きいのかもしれない。同盟の兵力増強だけじゃない、迎撃計画にも影響を与えた可能性が有る。だとすれば原作とはかなり違った展開になるのかもしれん……。

ラインハルトが立ち上がった。
「卿の見る所は正しいと私も思う。反乱軍はここまで耐えてきたが人心の不安を抑えるためにも近日中に攻勢をかけてこざるを得まい。我が軍は彼らの挨拶に対し、相応の礼を以て報いることとしよう。双頭の蛇の陣形によって……」

どうしてこう帝国軍人てのはカッコつけた言い方をするかね。ラインハルトだけじゃないよな、他の奴も妙にカッコつけた言い方をする。簡単に迎撃するぞで良いだろうに。変に飾り立てるから皆が興奮する。戦争なんだからもっと冷静になれよ。煽られて興奮するなんて門閥貴族の馬鹿共と一緒だろう。頭に来たからもう一度目の前のグラスを睨んだ。そうじゃないと冷笑しそうだ。

「黒姫の頭領はどうお考えですか?」
「……」
質問してきたのはヒルダだった。俺の方を窺うような表情をしている。頼むよ、俺に自愛しろって言ったのはそっちだろう。何で面倒に引き摺り込もうとするんだ。まあ作戦会議だからな、懸念事項が有るなら言えって事だろうが、気が進まない……。

「何か有るのか、これは作戦会議だ、遠慮はいらない」
ラインハルトが俺に発言を促してきた。提督達の視線が俺に集中する。……しょうがないな。
「同盟軍が出撃してくるとは限らないと思います」
俺の言葉に会議室がざわめいた。

「しかしそれでは有人惑星を見捨てる事になるが……」
ロイエンタールが視線を厳しくして問いかけてきた。親友の意見を否定されて面白くないらしい、自信満々の見立てだったからな。しかしな、面白くないのはこっちも同じだ。
「無防備都市宣言をしていますよ、攻撃しますか?」
俺の指摘に皆が困惑した表情を見せた。

俺の気に入らない事の第二がこの無防備都市宣言だ。無防備都市宣言、戦争もしくは紛争において都市に軍事力が存在していない地域であると宣言することで敵による軍事作戦時の損害を避ける目的で行われる。つまり武力が無いから攻撃するのは反則だよという事だ。

原作ではランテマリオ星域の会戦前に同盟の諸都市が無防備都市宣言を出したという記憶は無い。だがこの世界ではフェザーン方面の有人惑星は殆ど出しているようだ。これが何を意味するのか……。
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