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番外編
青騎士伝説 中編
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 昼過ぎから降り始めた雨は夕方には豪雨に代わり、地面は激しくぬかるんでいた。ここが……呼び出された場所が五十五層の一角の草原のエリアでなければ、もしかしたら重装備では歩けないほどだったかもしれない。だが、今は、その足は強い力で地面を踏みしめてくれていた。

 その歩みが鈍ることは、ない。
 しかしその一方、歩みが早まることも、ない。

 (「『青騎士』は、どんな時でも慌てた様子を見せない。死ぬ瞬間まで、余裕を保って逝く」)

 それは戦場への歩み一つとっても、例外ではない。

 彼の目的は、「囚われたグリーンプレイヤーの救出」ではない。グリーンプレイヤーを襲った「犯罪者(オレンジ)プレイヤーの殲滅」なのだ。「遅れたら人質の命は無い」は、他のプレイヤーにはともかくとして、彼にとって急ぐ理由にはならない。

 (「『青騎士』は、無言」。無言で、敵を倒す)

 激しい雨は視界を奪い、見えるのは五歩、十歩先がせいぜいといったところか。しかしそんな中でも、表示されたマップウィンドウはしっかりと彼の目にその行く先を示してくれる。この雨ではMobのポップも影響を受けるのか、自分のそこそこに鍛えられた《索敵》スキルに反応は無い。

 (有難いッス。今は、耐久度が厳しいッスから)

 即座に『リズベット武具店』を飛び出したせいで、それぞれの耐久度はまちまちだ。籠手や具足はほぼ修繕完了、十分な耐久度があるが、鎧や槍はこれからオレンジプレイヤー……それも直々に『青騎士』に挑戦状を叩きつけてくるほどに準備を整えた相手と戦うには少々心もとない。

 (フィールドMobの相手は、出来れば避けたいッス)

 なおも《索敵》を油断なく続けながら一人進撃する、『青騎士』。
 その淀みなく動く足が、

 (ッ!?)

 つんのめるように引き止められ、
 『ようこそ、「青騎士」君。我々《墓荒しの蝙蝠(コフィン・バッツ)》は君を歓迎するよ』

 芝居がかった、鼻につく高い声が響いた。





 今でも夢に見るあの夏の日、自分は逃げた。

 自分は、ソラを……皆を守れるだけの力があったかもしれないのに。少なくとも自分のステータス構成(ビルド)は、攻撃一極型だったソラのそれよりもはるかにあの戦闘で壁役を務めるに向いていたのに。あの後シドが全力で援護に向かってくれていた事を考えると、あそこで自分が残ってソラと共に戦線を支えていたなら。怯えることなく戦えていたなら。

 そんな自責の念の中で、自分は何度も夢を見た。
 夢の中で、何度もソラの顔が浮かんでは消えた。

 悪夢の中の彼女の顔は、いつだって笑っていた。転移脱出する自分が最後に見た、慈しむような微笑のままだった。その笑顔は、一層自分をみじめにさせた。いっそ罵っ
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