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番外編
青騎士伝説 中編
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てほしかった。呪いの言葉を吐いてほしかった。もっと生きていたかったと泣いてほしかった。けれども彼女は、いつだって笑っていた。

 ソラは分かっていたはずなのだ。自分が、彼女よりも防衛に向いていた事を。だから彼女は本当なら言うべきだった。「ファーが前線に立って私達を守って」と。その言葉を告げようと一瞬動いた唇は、自分の表情を見て引き締まり、そのあとに頬笑みへと変わって、「二人は逃げて」と告げなおした。

 自分の表情は、それほどまでに頼りなく、弱弱しかったのだろう。

 悔しいことに、その通りだ。自分は、信じられなかったのだ。あの名だたる殺人者(レッド)プレイヤー達を、自分が抑えられると。『赤目のザザ』の刺突剣を、自分の盾が捌ききれると。『ジョニー・ブラック』の毒ナイフに、自分の耐毒スキルが勝ると。『潰し屋ダンカン』の戦鎚を、自分の反応速度が回避しきれると。

 今更「たら、れば」を言っても仕方ない。
 仕方ないが、それでも考えずにはいられない。

 自分は果たして、真っ先に逃げるべき程に弱かったのか、と。
 あるいは、敵を相手に渡り合えるほどに強かったのか、と。

 その問いかけに対して自分は、『青騎士』となった今でも、答えを出せないままでいた。





 風の噂で聞いた夏の日の、『ラフコフ討伐戦』。
 その血みどろの乱戦の始まりとなったのは、目晦ましと待ち伏せ、そして、―――罠。

 ファーの足を強烈にはさんだのはその一つ、『トラバサミ』だ。二つの半円形の鉄輪が絡みあうようにしっかりと足を挟んで移動を著しく妨害し、設置された鋭利な棘は貫通属性攻撃として継続ダメージを与え続けるという、凶悪な罠。

 それは、未だに条件のはっきりしないエクストラスキル、《罠設置》。少数ながら操るプレイヤーのいるこのスキルは、普通はダンジョンの狭い通路などに複数を設置するのが定石であり、狙うのは高レベルの《索敵》を持たない獣型のMobが主だ。

 それを。

 (こんな広い場所で、プレイヤーに対して……っ!?)

 ありえない。確かにここは主街区から『結界の丘』までの一直線上のルートだが、それでもこのフロアは馬や馬車などの移動手段も豊富で、それらを使えばこの罠は反応できずに無駄骨となりかねない。だが敵は、ファーの動きを完全に読み切って配置していた。

 あまつさえ。

 『音声クリスタルから失礼するよ、ファー君……いや今は『青騎士』君と呼んだ方がいいのかな? 私の名は……まあ、それは後の楽しみに取っておこう。今日は我々のギルドの発足式に来てくれて感謝感激だよ』

 そのタイミングを見計らっての、音声クリスタルを設置して。
 だが。

 『君は主賓だからゆっくりしていきたま―――』

 訝しむ
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