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ソードアート・オンライン 〜無刀の冒険者〜
番外編
青騎士伝説 前編
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ったはず。確か軍以外では殆ど誰も持っていない上に、えらく使い勝手の悪いらしいそれを手に持った騎士が、ゆっくりと屈んで左手をもがく男の胸に当てる。

 「ひ、い、嫌だ、牢獄は、やめ、」
 「――」

 男の悲鳴は、途中で掻き消された。騎士がヘルムの奥で何かを……システムに聞きとれるぎりぎりの音量で呟かれた言葉によって、男の姿そのものが消滅したからだ。シリカにもなじみ深いそのエフェクトは、結晶による転移のそれ……ということは、彼は牢屋へと転送されたのだろう。

 「うわあああ!!?」「逃げろ、逃げろお!!!」「化けモンだ、殺される!!!」

 一人が牢獄へと転送されたことでオレンジ集団は撤退を決め込んだらしく、口々に悲鳴をあげて腰のポーチから転移結晶を取り出し、散り散りに転移していく。

 と、

 「うわあああっ!!?」

 一人が、悲鳴を上げた。騎士が重量級の体の許す限りの速度で突進し、逃げ惑う一人に同様に槍を突き立てたのだ。先程までの涼しげな歩みとは一転、まるで……いや、正真正銘修羅の闘気を纏って疾走した青い騎士は、その突進の勢いのまま男を後ろの木もろとも深々と貫く。

 「な、なんで、なんで俺だけ、あいつらも、あいつらだって、う、うわあああ!!!」
 「――」

 男の絶叫は、唐突に途切れた。全く同様に、牢獄へと転送されたのだろう。

 「うあ……」「あ、……」「ひっ……」

 誰もいなくなった広場で佇んでいた騎士が、こちらを向く。全員が目に見えて息をのむ。

 だが、その騎士はシリカ達をじろりと一瞥しただけで、そのまま転移結晶にてどこかへ去って行った。その行き先は、やはり限界まで抑えられた声のせいで、誰一人聞きとることは出来なかった。シリカ達五人に残ったのは、強烈な青の印象と、本能的な恐怖だけ。

 「あ、……『青の亡霊騎士』……?」

 誰からとなく、ぽつりと呟かれた言葉。
 それはここ最近、中層フロアで噂になっていた、一つの怪現象の通称だった。





 『青の亡霊騎士』。

 その噂が中層フロアに流れ始めたのは、アインクラッドに秋の足音が聞こえ始めた頃だった。オレンジプレイヤーを手当たり次第に攻撃して、牢獄送りに……一説では殺しさえもする、仕事人。所属するギルドはおろか、レベルも素性も、名前すらも不明な、一人のプレイヤー。

 いや、名前は分かっている。
 正確には、「分かっているのに分からない」のだ。

 「BlueKnight」。

 カーソルに表示されるのは、そのアルファベット。だと言うのに、アインクラッド第一層、『黒鉄宮』に置かれた『生命の碑』に、()()()()()()。以前からきっと存在するだろうと言われ
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