暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン 〜無刀の冒険者〜
番外編
再びの『合奏』を求めて
[2/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
助からないことを。
 なぜなら、本人にそう言われていたから。

 ―――私は、多分|持(・)|た(・)|な(・)|い(・)んだっ。

 ある晩、二人きりでの会話で、彼女はそう言った。
 その口調は、まるで明日の朝食を語るように、いつもと同じ明るい口調だったのを覚えている。


 ―――私の……えっと、現実での私の持ってる持病でねっ。ベッドでずっと寝てるってのも理由だけど、なんていうのかなっ、あっちこっちに……血栓? 血のカタマリが詰まっちゃうんだっ。詰まる場所が体だったらまだいいんだけど、頭に行っちゃうこともあるんだなこれがっ。そうするとさ、手術出来ないじゃんっ? ナーヴギア被ってるとっ。

 困ったような、照れたような笑顔での言葉。
 明るい口調の裏で、泣きそうなくせに。

 それでも、強く、眩く笑いながら。

 ―――一年半くらい経ってからかなぁ? なーんか急に体に力が入らなくなったりすることが、時々あるんだっ。多分、向こうの体がおかしくなっちゃってるんだ、と思う。だから私はきっと……んー……皆と一緒に最後までは行けないんだっ。

 あまりにも眩すぎて、どんどん霞んでいくように笑って。

 ―――でも、レミは。レミは、ずっとレミのままでいてね? 私は、|コ(・)|コ(・)が大好きだから。
 ―――私の代わりにっ、ココを、ずっと守ってて、ね? 変わらずにいてね?

 彼女はそう言った。

 私は、その言葉に頷いた。
 口下手な自分が出来たのは、頷いて、約束することだけだったから。

 そう、私は約束したのだ。
 あの時、この場所を守ると。たとえ彼女がいなくても、ココを守ると。

 だから私は、彼女自身は守れずとも、その約束だけは絶対に守ってみせる。





 私は、変わらなかった。変わらずにいると、ソラと約束したから。
 でも、周りは変わってしまった。その変化に抗おうと、私は頑なに以前の生活を守った。

 (……変わらないように)

 家に帰ってすぐに準備した簡易料理道具がアラームを鳴らしたのを確認して、テーブルに置いておいたカップに注ぐ。自作の、お気に入りのマグカップ。色違いでよっつ作ったのだが、今取りだされているのはピンク色の自分のもの、一つだけ。

 (……変わって、しまわないように)

 皆で囲んだ食卓に並ぶ四つの椅子はあの頃のままだが、その内三つは空席。そして一つは、もう未来永劫埋まることはない……が、それは分かっている。分かっているが…いや、やめよう。考えるのを放棄して前を向くと、家具の一つの上に置かれた写真立てが目に入った。

 写真。四人で撮った映像結晶から作った、ギルドの集合写真。
 皆、弾けるような笑顔だ。笑うのが苦手な自分も、精一杯に
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ