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ALO編
episode6 会議の席、勇者の底力4
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 「ああ。こちらもすぐにフリーリアに向かおう」

 キリトは、嵐のように去っていった。

 ―――世界樹の上に行きたい……ある人に、会うために。

 その言葉だけを残して。いや、それだけではないか。アリシャの抱え持つ、大きな袋……可視化された金貨の山も一緒に残していきやがった。一枚で十万を表すミスリルの硬貨がぎっしりと詰まったその袋に、領主二人が目を丸くして中を何度も覗きこむ。その様子を見ながら俺は、

 (……ってか、アレ、そんなに多かったのか……。……やべえ、俺の方が持ってる……)

 己のストレージを思い出して、内心で冷や汗をかいていた。

 そう言えばエギルに説明を忘れていたが、見たところのキリトの熟練度からするに恐らく奴も謎のSAOデータ引き継ぎを受けたのだろう。とすれば、この巨額の金もキリトがあっちの世界で稼いだ金だったということだ。

 が、俺は知っている。アイツは実は結構浪費家で、アヤシげな剣や胡散臭い食いモンに次々金を使いまくるタチだ。その上、経験値とは違ってガンガン効率重視で金が稼げるわけではない、ソロプレイ。そう考えるとゲーム終盤にエギルからなかなかの大金を受け取り、尚且つギルドの金額まで加算されていた俺の方が金額が多いのも頷ける。

 (ま、ばれなきゃいいか……)

 とりあえず内心の汗を拭って、ケットシーの首都、フリーリアに向かって飛び始める一団を飛行して追う。有難いことに『随意飛行』が出来ないメンバーも(ごくわずかとはいえ)いるようでその速度は超絶飛行苦手野郎の俺でも辛うじてついていける。ついていける、はず。……正直、きつい、が。

 だが、それを承知で速度を上げる。
 アイツに……アリシャに、確認しないといけないことがあるからだ。

 「おい、アリシャ」
 「ん、なにかナ? シド?」

 編隊を組んでの飛行の先頭を行くアリシャに(死力を振り絞ってなんとか)追いついて声をかける。いや、不意打ちしようとかそういうわけじゃないから側近の諸君、武器はしまってくれたまえ。

 「キリトから貰った金額で、軍資金は足りそうか?」
 「ンー……ケットシー用の装備は多分足りるんだけど、ネ……」

 言葉を濁すアリシャ。やっぱり、と内心で舌打ちする。仕方ない。

 口を開きながら同時にウィンドウでメッセージを打ち込む。送り先は、フリーリアに残してきたブロッサムに対してだ。何かあったらいつでも連絡を、って言われていたのだ、ならば今連絡しても大丈夫だろう。

 なんと伝えるかと考えながら、アリシャには、軽く。

 「分かった。《竜鎧》の分の金は、俺が立て替えておく。すぐに準備に取り掛かってくれ」
 「っ!? 立て替えておく、って、トンデモない金額だヨ!? そん金額どこに、」

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