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トゥーランドット
第二幕その四
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います!」
 彼女は父のその言葉に対あがらった。そして立ち上がりカラフを見下ろした。その目には激しい憎しみの炎が宿っている。
「私はあの男の心が見える。その黒い瞳には私を侮蔑する光が宿っている。私もまた一人の女に過ぎないのだと」
 カラフはそれに答えない。ただトゥーランドットを見上げているだけである。
「だが私は違う、私はロウリン姫がこの世に生まれ変わった存在、誰も私を辱めることも触れることも出来ないのだ!」
「姫よ、もうたいがいにせぬか!」
 皇帝はそんな娘を叱った。玉座から立つ。
「誓いを守れというのだ!そなたも誇りがあるならそれを守れ!」
「嫌です!」
 彼女は感情を露わにして叫んだ。
「私は誰のものにもなりたくない、私は誇りを傷つけられるのは嫌です」
「しかしそなたは言ったではないか、謎を解いた者の妻になると」
「しかしそれは・・・・・・」
 トゥーランドットは弱り果てていた。民衆も役人達を彼女から目を離さなかった。
「私はこの身を誰にもわたしたくはない、私以外の誰にも」
「姫よ」
 ここでカラフが口を開いた。
「私の願いをお聞き届け下さい」
 静かに語り掛ける様に言った。
「そんな・・・・・・」
 彼女は蒼い顔でカラフを見た。
「私は貴女が出した三つの謎を全て解いた。今度は貴女の番です」
「しかし・・・・・・」
 トゥーランドットは動けなかった。最早その身体を震わせるだけであった。
「姫よ、いい加減にするのだ。その若者の言う通りにせよ」
「けれど・・・・・・」
 彼女は最早言葉を発することすら出来なくなりつつあった。
「ならば姫よ、私も貴女に謎を出そう」
 カラフはトゥーランドットを見上げて言った。
「何っ!?」
 これには皆驚いた。カラフは言葉を続けた。
「私の名を答えて下さい。朝日が昇るまでに。もし答えることが出来れば私の命は貴女に差し上げましょう」
「若者よ、その言葉本気か!?」
 皇帝はその言葉を聞いて思わず声をあげた。
「私は嘘は言いません」
 カラフは強く頷きながら言った。そして階段に足をかけた。
 ゆっくりと登っていく。そしてトゥーランドットの側に来た。
「今よりその謎解きははじまります。姫よ、私の謎解きに答えていただけますね」
 トゥーランドットは一言も発さず頷いた。
「よろしい」
 カラフはそれを見て言った。
「私の名を答えられなければ貴女は私の妻に、答えられれば私の命は貴女のもの。今それを宣言しましょう!」
 民衆はそれを聞き大いに叫んだ。こうして再び謎解きがはじまった。

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