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Monster Hunter ―残影の竜騎士―
12 「師弟」
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 竜車で渓流のベースキャンプまで送ってもらってから2週間。あれから特筆すべきような事件もなく、渓流は平穏だった。これこそ不特定多数に避けられるのを覚悟で、村まで行った甲斐があったというものだ。ペイントボールも翌日にはすっかり落ち、空気ってなんて美味しいんだろうと暫く感動する日々だ。
 低血圧なのか、寝起きが苦手なナギはいつも日も高く昇ってからの起床を果たす。といっても、時間にすれば朝の10時やそこら。特別に遅いというわけではない。
 ぼーっとした頭で桶と着替えを手に取り、河へ。冷え切った水を頭から豪快に被ることからナギの朝は始まる。
 家に戻ってまだむにゃむにゃ言いながらナギの布団にくるまるルイーズを転がり落とし、パンパンと叩いて気を抜いた。竹で作った物干しに引っ掛けると、朝食の準備だ。
 流れるような作業で火を熾しフライパンを温めた。ここでいう“火を熾す”というのは簡単で、クルペッコなどが成長と共に落とす古い火打石を用いて火花を出し、それを枯れ葉や乾いた木の枝などに着火するだけの簡単なものだ。
 正直言うと、今では“簡単”などと行っているのもの、火打石から火花を散らすこと、またそれを火種に着火するという作業はなかなか難しい。コツを覚えるまで少々時間がかかるが、元来器用なナギはひと月もしないで覚えた。あれは14歳くらいのときだったか。今から8年前の話だ。
 温まったフライパンに分厚く切った肉をベーコンがわりに乗せ、表面がいい具合になるまで待つ。それから慣れた手つきで卵を2個割り、肉の上にかけた。肉から自然に出る油で焦げ付かないのだ。
 火を消して蓋をし、余熱でちょっと蒸せばナギ流ベーコンエッグの完成。朝は大概これを食べていた。たまにガーグァの卵などでスクランブルエッグを作ることもあるが、何分調味料が塩しかないためあまりつくらない。ナギはバターや砂糖を入れる派だからだ。それにそうそう塩分ばっかり摂っていては体にもよくないだろう。
 余った端肉をそれっと放ってデュラクにやる。ガチンと歯が鳴り、ナギの手のひら程の大きさだった肉をぺろっと食べた迅竜はゴロゴロと喉を鳴らした。
 ベーコンエッグを皿に盛り付ける頃には目も覚めたルイーズが、のそのそと席に着く。しっかり手を合わせていただきますをしてから、2人はナイフとフォークに手をつけた。デュラクはいつも勝手にどこかで草食竜を食べてきている。家に持って帰るのはナギが肉の調達として頼んだときのみだ。庭が血濡れになるからやめてくれと、昔ナギが言ったのを律儀に覚えていた。

「またあの温泉にいきたいニャ」
「お前だけならいつでも行けるだろ。行ってこいよ。ギルドの受付嬢には気に入られてたみたいだし」
「にゃふー」

 なんだかんだ言いながらも、ナギから離れた所で人に囲まれるのは怖いのだ。メラルーという
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