暁 〜小説投稿サイト〜
水の国の王は転生者
第九十一話 ヴィンドボナの日々
[1/7]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 時間を少し遡って、帝政ゲルマニアの新帝都ヴィンドボナ。

 都市の中央をドナヴ川が横切るゲルマニア屈指の大都市である。
 かつてのヴィンドボナは交通の要所だったが、長年大河の氾濫に悩み続けていた。しかし現在の大公アルブレヒトの治水事業によって氾濫の心配は無くなり、交易と治水を利用した農業との両輪で国力を蓄え、ゲルマニア最大の諸侯に登り詰めた。

 そのアルブレヒトは、ゲルマニア皇帝アルブレヒト3世として選出され、その権勢を内外へ知らしめ様と戴冠式を行う為に各国に使者を出した。

 トリステイン王国マクシミリアン1世は、王妃カトレアと数人のお供と共に、即位後初の外遊として、ここヴィンドボナに訪れていた。

「ゲルマニア屈指の大都市と聞いていたが、喧騒に包まれている訳でもなく、綺麗に整備されているな。うん、良い都市だな、掛け値なしに」

 ヴィンドボナ市内をマクシミリアンとカトレアを乗せた豪華な馬車が行く。
 御者席には執事のセバスチャンが手綱を握り、二台目の馬車には、外務卿ペリゴールを団長とするトリステインの使節団の馬車が続き、三台目の馬車にはベティとフランカのメイドコンビは、トリステインから持ってきたドレス等の物資を積み込んだ貨物用の馬車の御者席に座ってマクシミリアンとカトレアの馬車に続く。
 三台の馬車の周囲を、使い魔のグリーズに跨ったミシェルと、アルブレヒトの命で派遣された武装した帝国貴族が厳重に警備していた。

 本来なら、市内を行く豪華な馬車に市民の目が向けられるものだが、ヴィンドボナ市民の目は馬車の上空をゆっくりと飛ぶ、巨大な怪鳥に向けられていた。
 言うまでも無く怪鳥の正体は、カトレアの使い魔、サンダーバードのフレールだった。

「あんまり目立つのも嫌だし好都合だけどね」

「何か仰いましたか? マクシミリアンさま」

「いや、なんでもない。市民には活気があるみたいだな」

「……でもマクシミリアンさま。少しばかり物々しくないでしょうか?」

 馬車の窓から市内を覗いたカトレアは、持ち前の直感でヴィンドボナに漂う不穏な空気を感じ取った。

「物々しい……か、新皇帝の即位に反対する勢力が未だ市内に居るのかもしれないな」

 マクシミリアンは自身の謀略の影響である事を言う訳にもいかず、適当に話をあわせた。

「マクシミリアンさま。わたし達が泊まる所はどんな所なんでしょうか?」

「過去の大公が狩猟用に建てた離宮と聞いたな。名前は確か、ショーンブルン宮殿」

 マクシミリアン達はヴィンドボナ市の中心区画に入ると、真っ先に巨大な泉が抱えた広大な庭園が目に入った。
 何か水魔法を絶えず使っているのか、泉からは5メイル程の噴水が空高く噴き出されていて、水しぶきが太陽の光に合わさって綺
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ