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売られた花嫁
第二幕その六
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第二幕その六

「恋程価値のあるものはない。お金なんかで買えはしないのはわかっている」
 今の自分と矛盾する行為であってもだ。
「三〇〇グルデンなんかで売れるものか。マジェンカを失う位なら死んだ方がましだ」
 だが彼はケツァルからその金を受け取ることになった。それは何故か。
「恋を捨てるのなんて論外だ。恋は手に入れようとすれば逃げてしまう。望んでもこちらにはやって来ない。そんなものをどうして売れるというんだ」
 矛盾していた。そしてその矛盾については彼もよくわかっていた。
「マジェンカの為だ、全ては」
 どうやらその三〇〇グルデンもまたマジェンカの為であるらしい。真相はまだ彼にしかわからないが。
 それを今わかっているのは彼だけであった。そう、ケツァルもマジェンカもわかってはいなかった。マジェンカに至っては今の時点では売られたことすら知らないのである。
「マジェンカ、見ていてくれ」
 彼は最後にまた呟いた。
「君の為に僕は戦っているんだ。それは最後でわかる」
「皆さん」
 ここで店の外からケツァルの声がした。
「来たか」
 予想通りであった。彼はケツァルがここに戻ってくることを予想していたのだ。しかも証人達を連れて来て。彼は一人密かに身構えた。
「ここですよ、ここに彼がいます」
「しかし本当ですか」
 店の外で男の声がする。
「何がですか?」
「イェニークのことですよ」
「それですか」
「ええ」
 もう声は扉のすぐ前にまで来ていた。
「彼がそんなことを。信じられません」
「信じられるも信じられないもこれは事実です」
 ケツァルはそう答えながら扉に手をかけた。
「それを今から皆さんに証人になって頂くのです。宜しいですね」
「わかりました」
 そして扉が開かれた。ケツァルの後ろには大勢の村人達がいた。
(来たな)
 イェニークはそれを見て心の中で身構えていた。
「やあイェニークさん」
 ケツァルは勝ち誇った顔で彼に話し掛けてきた。満面に笑みを浮かべている。
「先程のお話のことですが」
「はい」
 彼は顔を向けてきた。顔はビールのせいでほんのりと赤くなっている。
「さっきのお話ですか」
 酔っているふりをしてみせた。ケツァルを油断させる為である。
「はい。それも宜しいですね」
「ええ。三〇〇グルデンに関して」
「皆さん、聞きましたか」
 彼はそれを聞くと村人達に嬉しそうな顔を向けた。
「彼は今三〇〇グルデンと言いましたね」
「ええ」
 村人達は何が何かわからないままそれに頷いた。
「それでは話を続けましょう」
 そしてまたイェニークに顔を戻した。
「イェニークさん」
「はい」
 彼は座ったまま答える。
「そちらの席に戻って宜しいでしょうか」
「ええ、どう
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