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売られた花嫁
第二幕その六
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ぞ」
 彼はそれに応えた。
「構いませんよ、どうぞこちらに」
 そして先程まで彼が座っていた目の前の席を薦めた。ケツァルはそれに従いそこに着いた。その周りを村人達が取り囲む。イェニークも囲まれる形となった。
「それでは」
 ケツァルは席に着くと懐に手を入れた。
「まずは先程の契約書ですね」
「はい」
 イェニークはビールを飲みながらそれに応える。目はケツァルに向けている。
「これですが」
 そしてそれをイェニークの前に出してきた。村人達が見やすいようにわざわざ広げる。
「ここに書いてあることに間違いはありませんね」
「ええ」
 ビールを飲みながら素っ気なく答える。
「確かに。間違いありません」
「クルシナの娘は」
 ケツァルは嬉しそうに言う。字の読めない者に言って聞かせる為だ。
「マジェンカのことだな」
 皆それを聞いてヒソヒソと囁き合う。
「ミーハの息子以外とは結婚することはできない」
「ヴァシェクのことか」
 皆それを聞いてまた囁き合った。
「これで間違いありませんね」
「はい」
 イェニークは頷いた。
「確かにその通りです」
「何!」
 村人の中にはそれを聞いて激昂する者までいた。

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