暁 〜小説投稿サイト〜
売られた花嫁
第一幕その一
[2/3]

[1] [9] 最後 最初 [2]次話
ね。母さんに言われたの」
「誰かと結婚しろって?」
「ええ。それでもうすぐ家に結婚の仲介人さんがやって来るの」
 この時代この地域にはそうした職業もあったのだ。結婚の仲介を生業とする人達である。
「ふん、それで」
「どうしたらいいの!?私知らない人や嫌いな人と結婚なんかしたくないわ」
「安心して、マジェンカ」
 イェニークはにこりと笑ってマジェンカに対してそう言った。
「何で」
「よお」
 ここで周りの村人達が二人に声をかけてきた。
「美味い酒も飲んだし踊らないか?」
「一緒にな」
「私はいいわ」
 マジェンカは暗い顔のままそれを断った。
「今は気持ちが晴れないから」
「そうなの」
「そんなの踊ればすぐにさっぱりするのに」
「まあいいじゃないか。俺達だけでも踊ろう」
「そうだな」
 人々は教会の前の広場で輪になって踊りはじめた。二人はテーブルに向かい合って座ったまま踊りを見ながら話を再開した。
「それでね」
「うん」
 イェニークはマジェンカの言葉に頷いた。
「私本当に困ってるのよ。一体どうなるか」
「本当に心配なんだね」
「当然よ」
 その何気ない言葉にさえ頬を膨らませた。
「相手は噂によるとミーハさんとこの息子さんらしいけれど」
「ミーハさんの」
 イェニークはそれを聞いてその緑の目に奇妙な光を宿らせた。ミーハはこの村で一番の長者である。
「まだよくわからないけれどそう聞いたわ」
「そうなんだ」
 イェニークはそれを聞きあらためて頷いた。
「どうしたらいいかしら」
「そうだなあ」
「ねえイェニーク」
 マジェンカはまた彼に問うた。
「これを聞いても何とも思わないの?」
「何を?」
「私がお嫁さんに行くことよ。何か全然驚いても心配してもいないようだけれど」
「それは誤解だよ」
 イェニークはまずはそれを否定した。
「当然心配しているさ。他ならない君のことだから」
「そうかしら」
 だがマジェンカはそれを聞いてもまだ懐疑的であった。
「私にはそうは見えないのだけれど」
「それは気のせいだって」
 彼はまた否定してみせた。
「本当かしら」
「僕を信じれないっていうの?」
「そうじゃないけれど」
 マジェンカは逆に言葉を曇らせた。
「けれど貴方ってもてるから」
「まさか」
 彼はそれを笑って否定した。
「それは買い被りだよ。僕はそんなにもてないよ」
「嘘よ」
「嘘なもんか。それにもてたってね」
「ええ」
「僕は君にしか興味がないんだから。それは信じて欲しいな」
「どうかしら」
 マジェンカはすねてそう言葉を返した。
「今だって何か他人事だし。信じれないわ」
「おやおや」
 お手上げといったジェスチャーをしておどける。
「どうしてもか
[1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ