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とあるβテスター、奮闘する
投刃と少女
とあるβテスター、赤面する
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ヤー───βテストの当選者は、たった1000人しかいなかったのだから。
その10倍もの人数がいれば、以前の半分の時間もかけずに追い付けていたはずだ。

だけど、それはあくまで仮定の話だ。
現にSAOがこうしてデスゲームと化してしまった以上、全プレイヤーに攻略参加を無理強いするわけにはいかない。
元々MMOなんてものは遊び方も人それぞれであり、仲間内でのんびりとSAOを楽しむつもりの人だっていただろう。
鍛冶や料理などの非戦闘系スキルを上げて楽しむプレイスタイルの人は、そもそも攻略向けのステータスじゃない。
そんな人達に対して『命を懸けて前線に出ろ』と要求するのは、あまりにも酷というものだ。

「じゃあユノくんとわたしでボス倒すしかないね。がんばろー!」
「……ん、そうだね。そんなに簡単な話じゃないけど、意気込みとしてはそのくらいあったほうがいいかな」
いとも簡単そうに言い、日常的に命を危険に晒しているにも関わらず、シェイリは相変わらずの間延びした口調でにへらと笑う。
傍から見れば緊張感に欠けていると思うかもしれないが、この状況に至って尚笑顔を絶やさない彼女のことが、正直言って羨ましかったりする。
この一ヵ月彼女と行動を共にして、彼女のこういう面に支えられたことは、一度や二度の話じゃない。

───まあ戦闘になるとちょっと人が変わるというか、ぶっちゃけ怖いけど。

最初の日、レイピア片手に青イノシシ相手に逃げ惑っていた彼女は何処やら。
今や両手斧を使ってバッサバッサと敵を斬り倒していく彼女の姿は、思わず『あなたの前世は剣闘士か何かですか?』と聞きたくなってしまう程だ。
もちろん、面と向かってそんなことを聞けば自慢の斧で真っ二つにされかねないため、実際に口に出したことはないけれど。

───両手斧って扱いが難しい武器のはずだったんだけどなぁ……。

SAOにおいて極めて初心者向けである片手剣や細剣を差し置いて、両手斧が一番しっくりくる女子高生というのは如何なものか。
この幼い少女(実際は同い年もしくは年上の可能性あり)が戦闘狂へ変貌するきっかけを作ってしまったことに何ともいえない責任を感じつつ、僕たちは迷宮区から程近い街『トールバーナ』の北門をくぐるのだった。

2022年12月2日。
本日夕方よりこの『トールバーナ』において、正式サービス開始後初の『ボス攻略会議』が開かれるらしい。


────────────


「みんな!今日はオレの呼びかけに応じてくれてありがとう!」
第1層迷宮区より徒歩十数分に位置する谷間の街『トールバーナ』。その中央広場に、よく通る男の声が響き渡った。
声の主───広場の中央に設置された噴水の縁に立つ青髪の剣士は、まるでユーザー主催イベントの司会者でもあるかのよう
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