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アルジェのイタリア女
第二幕その八
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第二幕その八

「楽しみにしてるわ。それじゃあね」
「ああ、またな」
 イザベッラ達に連れられてイタリア人達は宮殿を後にしていく。ここでようやくムスタファが我に返った。
「ふうう」
 まだ酔いが回ってはいても目は醒めていた。
「食ったのう。飲んだし」
「そうですね」
「おう、そなた達も来ていたのか」
 ズルマの声に応えて彼女達に顔を向ける。
「楽しかったぞ、パッパタチは」
「そうみたいですね」
 ズルマはここでニタリと笑ってきた。そして主に対して言った。
「旦那様の御気持ちも知ることができましたし」
「わしの!?」
「はい、御后様もそれを御聞きになられました」
「何と」
 その言葉にはもう何も言うことが出来なかった。
「しまったのう」
 観念した。止むを得ずそれを認めることにしたのである。
「聞かれてしまっては」
「それではパッパタチの新しい誓いとして」
「どんな誓いじゃ?」
「素直に一人の女性を愛する」
「素直に一人の女性を愛する」
 ズルマの言葉を復唱した。
「決して意地悪をしない」
「決して意地悪をしない」
「宜しいですね」
「宜しいとも」
 彼は苦笑いを浮かべたまま最後まで言った。
「こんなことになるとはな。だがそれもよいか」
 エルヴィーラに顔を向けて呟く。
「そなたにそのままの想いを述べるのもな」
「最初からそうして下さればよかったですのに」
 エルヴィーラは困ったような悲しいような、それでいて楽しいような笑みを浮かべて彼に言った。
「それなのに」
「今までのことは済まん」
 もう意地悪は出来ない。今誓ったからだ。
「だからその分な。今まで以上に」
「だといいですけれど」
「仲良くやろうぞ。本当の夫婦らしく」
「はい」
 エルヴィーラの方は意地悪をしようという気なぞ何処にもなかった。だから快く頷く。二人がようやく素直になれたところでムスタファはあることに気付いた。
「そういえば」
「どうしたのですか?」
「イザベッラ達がおらんではないか」
「彼等ならもう帰りましたよ」
「帰った!?どういうことじゃ!?」
「ですから祖国へ」
 ズルマが言う。
「帰りましたけれど」
「何っ、わしは認めてはおらんぞ」
「それは私が」
 エルヴィーラが述べてきた。
「そなたがか」
「はい。この度の御礼に」
「そうだったのか」
「よいではありませんか?御礼としては安いものかと」
「ううむ」
 ズルマの言葉には難しい顔になる。ここでハーリーも言った。
「それに御后様とようやくこうして素直になれたのです。輝かしい祝いの施しとして」
「そうじゃな、そこまで言うのならよいか」
 ムスタファ派ハーリーの言葉も聞いて朗らかに頷いた。
「留める者は貧しい
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