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アルジェのイタリア女
第二幕その八
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者に施しをする。コーランにもある」
「はい」
「教えが違おうとも神が違おうとも寛容であれとも言うしな」
「左様です。ですから彼等にも」
「この度は恩恵を」
「うむ、ならばそうしよう。しかしじゃ」
 ムスタファはここで気付いた。
「何か?」
「彼女等はまだ港にも着いてはおらんだろう」
「そうですね」
 ズルマがそれに応えた。
「丁度宮殿を出たところかと」
「そうか。ならば出るぞ」
「宮殿をですか?」
「それでは間に合わん。ここはバルコニーじゃ」
 そこから宮殿の門が見えるのである。出迎えには丁度いい場所であった。
「バルコニーですか」
「そうじゃ、そこから挨拶をしたいのじゃが。どうじゃ?」
「それはよいことです」
 エルヴィーラがにこりと笑ってそれに賛成した。
「それでは今から」
「うむ」
 ムスタファ達は従者達まで連れて総出でバルコニーに出た。丁度門からイザベッラ達が港に向かうところであった。
「そこのイタリア人達」
 ムスタファが彼等に声をかける。
「今回は感謝しておるぞ。その謝礼じゃ。行くがいい」
「それでいいんですね!?」
 イザベッラが彼に問う。
「もうイタリアに帰りますよ」
「どのみち帰るつもりであろう」
「まあそうだけれど」
「うむ」
 リンドーロとタッデオがそれに頷く。
「じゃがこそこそと逃げるよりは堂々と帰る方がいい。だからじゃ」
「おお、太っ腹」
「流石は」
「これがイスラムじゃ」
 彼は大きな腹を揺らしてさらに大きな声で豪語した。
「異教徒であっても寛大に。アッラーは仰った」
「何かイスラムって凄いな」
「ああ」
「俺達も負けていられないぞ」
 イザベッラ達と共に出て行くイタリア人達もその度量に打たれた。
「さあイタリアで楽しくやるがいい。じゃがわしもまたそちらに行くぞ」
「パッパタチですか?」
「ぞうじゃ、パッパタチの為に」
 リンドーロに答える。
「また大いに飲んで食おうぞ」
「そして意中の人に素直になって」
「幸福になるのじゃ。よいな」
「はい」
「では私もそれに」
 ハーリーがムスタファの前にやって来た。
「うむ、よいぞ」
「では私も」
「私も」
 ムスタファがハーリーを許すと従者達も。遂にはエルヴィーラやズルマまで加わってしまった。
「皆でパッパタチを祝おうぞ!」
「ムスタファ様万歳!」
「パッパタチ万歳!」
「僕等も僕等で」
 イスラム教徒達に負けじとイタリア人達も。リンドーロがイザベッラに顔を向けてきた。
「ええ、イタリア万歳!」
「イタリア万歳!」
「そして」
 ここでタッデオが言う。
「パッパタチ万歳!」
「パッパタチ万歳!」
 彼等もパッパタチを讃えはじめた。
「美酒に美食に歌に踊り
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