エイプリルフール記念 番外編その2
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、その事ね」
大量の魔物が押し寄せてきた事でこの城を取り巻く空気は変わってしまった。人間がかつてそうであったように、仲の良い魔物を人間に殺されたモンススターは多い。
自然、恨みを持つ者も居るだろう。
「父上と母上は竜神の末裔ですよね…?」
さて、困った。しかし、嘘を取り繕ってもしょうがない。
「ルー。俺も、ソラも竜神では無いよ。竜の姿にもなれる人間だ」
「人間…?それは本当に」
俺もソラもコクリと頷く。
「外の世界では魔物は人間に殺されていると言います。…まさか父上と母上が奴らと同じ人間だなんて…」
「ルー。一方的な見方をしては駄目だ。今の世界が人間によってモンスターが虐げられているように、かつての世界はモンスターによって人間が虐げられていた。彼らが人間に恨みを持つように、人間達もモンスターによって肉親を奪われた過去がある。時間と共に記憶は薄れていく物だが、魔王バラモスが倒れてまだ十数年。まだまだ人々の記憶から憎しみが薄れるには短い時間だ」
「そんな…嘘だっ!」
ルーは勢い良く駆け出すと家を飛び出して言った。
「アオ…あの子にはまだ今の話は早かったんじゃ…」
「そうかもしれないけど…ね」
伝える事を怠ると伝わる事も伝わらないだろう。
それから数年。このあたりはモンスターによって秩序ある国へと変貌を遂げていた。
担がれているは竜神の子孫であるルー。巷では竜王と呼ばれているらしい。
彼がモンスターに影響力を増すにしたがって俺達の評判は下がる。人間だからだ。
「そろそろ此処にも居られないね」
「寂しいけどね。モンスター達も悪いやつらばかりじゃない。バラモスの悪の波動で狂っていた頃とは違う。…だが、それも人間達には分からない事だろうよ」
ソラの呟きに答えながら、俺達は此処を去る支度をしている。
俺達が居れば要らぬ諍いを起こしてしまうし、王として就任したルーは俺達が居ては邪魔になる。
彼には俺達が習得していた技術を教え込んでいる。その力を正しい事に使ってくれれば良いが…
天叢雲剣と天之尾羽張の二本をテーブルの上に置き、書置きを残して俺達は去る。
彼に残して上げられるのは俺達ではこれくらいだ。
竜の女王の城の一角のステンドグラスのある部屋で、ある特殊な星の巡りの時だけゲートが開く所がある。
攻略本によればその先に神龍なる者がおり、打ち勝てば願いを叶えてくれると言う。
どうしても叶えて欲しい願いが俺とソラには出来ていた。
「それじゃ、行こうか」
「うんっ」
俺はソラと連れ立ってゲートを潜り、この世界を去った。
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