暁 〜小説投稿サイト〜
魔法使いへ到る道
6.イベントの時は下らない物でも欲しくなるから不思議
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 季節は夏である。
 黙っていても汗をかくし、何もしなくても蝉は五月蝿い。そんな季節。
 日差しの下汗を掻きながら走り回るのが気持ちいいし、庭先で虫の鳴く声を聞きながら食うスイカが美味い。そんな季節。
 夏の風物詩といえば、みんなは何を想像するだろうか。いろんなものを思い浮かべては、あーでもないこーでもないと悩んだろするのだろう。
 そして、夏という季節の欠かせないものの一ついえば。
 そう、夏祭りである。
「というわけで、今日は近所の夏祭りの会場を訪れています。実況は私八代ケンジでお送りしています」
「ケンジ?アンタなに一人でぶつぶつ言ってんの?」
「なんでもないよー」
 疑問の目を向けてくるアリサを適当に交わしながら、しかし目線を正面に向けたまま離さない。
 普段なら眉をひそめるほどの喧騒も、今なら心躍るBGMにしか聞こえない。テンションが鰻登りでこの場で飛び跳ねたくなるくらいだ。
 ううむ。これは精神が肉体に引っ張られたのか、それとも元からこんなものだったのか。
 どうでもいいか。
 今はただ、目の前の戦場をどうやって駆け抜けるか。それが問題だ。
 今日のために両親からもらったお小遣いはちょっとおねだりして七百円。ともにいる三人娘のお小遣いをうまい具合に誘導して使わせたとしても二千円ぐらいだろうか。
 この資金の中で、夏祭りを十全に楽しめるのかと聞かれたら、なんとも答えにくい。
 焼きそば、たこ焼き、クレープ、りんご飴、お好み焼き、わたあめ、ベビーカステラ、ラムネ、フランクフルト、焼き鳥、等等。食い物だけでもこれだけあるというのに、金魚すくいやら射的やらヨーヨー釣りやら、ついつい財布の紐を緩ませてしまいそうな出店で通りは埋め尽くされている。
 如何ともし難い。打つ手なし。八方塞がり。四面楚歌。へのつっぱりはいらんですよ。
 俺の小さな脳みそではどうしようも無いというのが判断できたので、同行人の意見を求めてみた。
「行きたいとことか、ある?」
「わたあめ!」
「りんご飴食べたい!」
「射的よ!だれが一番か勝負しましょ!」
 オーケー。いってみようか。


 ポフ、と。気の抜けるような音が発せられた。
 音ともに銃口から飛び出したコルク栓は、風を切らずむしろそよ風にすら押し返されそうなほどの、子どもの動体視力で捕らえきれる程度の速度で飛び、
 前方約二メートルに設置された棚に並べられた的のうちの一つ。「1」と書かれたターゲットを見事に弾き飛ばした。
「大当たりだ、坊主!一等の商品の中から好きなのを持ってけぇ!」
「はーい!」
 頭にタオルを巻き、ランニングシャツにステテコといった風体の厳つい顔をしたおじさんは、大口を開けて笑いながら景品を選ばせてくれる。
 一通り目を通すことも無く、迷うことな
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