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トロヴァトーレ
第四幕その六
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うなら。ですから」
 もう言葉が消え入りそうになっていた。
「お逃げ下さい。お願いです」
 そう言うと遂に事切れてしまった。手がゆっくりと床に落ち目を閉じた。
「レオノーラ・・・・・・!」
 マンリーコは彼女の亡骸を抱いて慟哭した。もうそれは冷たくなっていた。
「私は愚かだった。貴女の様な天使を疑い侮辱するとは・・・・・・」
 そしてその場に泣き崩れた。だがそれはほんの少しの間だけであった。
「これは一体・・・・・・」
 そこに伯爵が入って来たのだ。
「何故彼女が死んでいるのだ」
「毒を飲んだ」
 マンリーコはレオノーラの亡骸を抱きながら言った。顔は彼女の死に顔を見たままである。
「私を救い自らの純潔を守る為にな」
「何ということだ」
 伯爵はそれを聞いて呆然とした。そしてそれと共に怒りがその全身を包んだ。
「それ程までにその男がいとおしかったというのか!私ではなく!」 
 そして人を呼んだ。
「誰かいるか!」
「ハッ」
 すぐに数人の兵士がやってきた。
「この女を葬れ。そして」
 マンリーコをキッと見据えた。その目には最早冷静さなぞ何処にもなかった。

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