第四幕その七
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後
第四幕その七
「この男をすぐに処刑しろ!火炙りだ!」
「ハッ!」
兵士達は敬礼してそれに応えた。マンリーコはレオノーラから引き離され引き立てられていく。レオノーラの亡骸も運び去られた。
「レオノーラ・・・・・・!」
「案ずることはない」
伯爵はレオノーラに顔を向けるマンリーコに対して怒りの言葉をぶつけた。
「貴様もすぐに彼女の後を追うことになるのだからな」
だがマンリーコはその話を聞いてはいなかった。最後にアズチェーナに顔を向けた。
「母さん」
そして彼女に声をかけた。
「さようなら!これでお別れだよ!」
「連れて行け!」
伯爵の無慈悲な声が響いた。そしてマンリーコは処刑台に連れて行かれた。伯爵は牢獄に残りアズチェーナを見下ろしていた。やがて彼女が目を覚ました。
「起きたか」
伯爵は目覚めた彼女を見下ろして言った。
「マンリーコは、あたしの息子は何処だい?」
「知りたいか」
彼は酷薄な声でそれに問うた。
「勿論だよ、一体何処にいるんだい」
「知りたいか」
また問うた。
「いい加減にしておくれよ。知っているなら教えてくれよ」
「いいだろう」
彼は笑いながら窓の方を指差した。
「あれを見るがいい」
そこには火刑台があった。そこに今マンリーコがかけられていた。
「ああっ!」
それを見てアズチェーナが叫んだ。
「よく見ろ、御前の息子の最後を」
伯爵は彼女の驚き、絶望する姿を見て楽しんでいた。アズチェーナは確かに絶望していた。
「ああ、何てことだい!」
「今火が点けられるぞ」
その言葉通り火が点けられた。そしてマンリーコは忽ち炎に包まれた。
「これで終わりだ。貴様の息子は今地獄に落ちた」
「確かにね」
アズチェーナは地の底から響き渡る様な声でそれに応えた。
「マンリーコはこれで死んだよ」
「そうだ、御前の息子がな」
「そうだね」
アズチェーナは無念そうに頷いた。だがそれで終わりではなかった。
「けれどね、それは違うよ」
「何!?」
伯爵はその言葉に耳を止めた。
「それは一体どういうことだ?」
「あたしは昔赤子をさらったのは知っているね」
彼女はゆっくりと顔を上げながら伯爵に対して言った。
「知らぬと思うか」
「そうだろうね。それはわかっているさ」
彼女はゆっくりと言葉を続けた。まるで幽鬼の様な顔で。
「その時あたしが火の中に投げ込んだのはね」
「私の弟だったのだろう。今その仇をとった」
火は燃え盛っていた。最早マンリーコの姿は何処にも見えない。
「違うさ」
「何が違うのだ」
伯爵はまだ彼女が何を言おうとしているのかわからなかった。
「あたしが投げ込んだのはねえ」
「誰だというのだ?」
「あたしの実の子だった
[8]前話 [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ