第1話『狩人』
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考えるベルメールではない。関係だって変えるつもりはない。だが、少なくとも自身が傷ついたことだけは確かだと、彼女は感じていた。
悲しみの底に沈みそうになり、もうただただ泣くことだけはしまいと必死に我慢しているベルメールを、涙ぐんだ目で見つめて。いつになく厳しい目で、感情をさらけ出して、ハントが言った。
「俺は……ベルメールさんには悪いと思ってるけど」
――わかっているからそれ以上は言わないで。
その言葉を発しようとして、だがいえなかった。口を開けば自分が泣きかけていることがばれそうだったからだ。涙腺が決壊してしまいそうだったから。
「ベルメールさんのことを第二の母さんだと思ってる! だから――」
「!?」
ベルメールの目が見開かれた。口を開いて、視線をさまよわせ、口をまた閉じて、開いて、だが言葉が見つからずに結局は口を抑えて、ただじっとハントを見つめる。
――今、ハントはなんと言った?
第二の母さん?
私を?
そう思ってくれている?
ハントが?
「――だからこそ嫌なんだ! 気を遣うな!? 無理だ! だって俺の母さんなんだ! 母さんなんだぞ!?」
ハントが叫ぶ。
狩りに行くようになってからは随分と大人びた印象を見せ付けていたはずの彼が。
「生きていてくれて、俺の世話をしてくれて、俺の心配までしてくれて! 大好きな母さんなんだ! そんな母さんがみかんばっか食ってるのをただ馬鹿みたいに笑ってみとけっていうのか!? そんなの、男がすることじゃないだろ!」
ハントが叫ぶ。
泣いたところなど、初めて会ったとき、あの戦争の爪跡場でしか見せたことがなかったはずの彼が。
「綺麗な母さんよりもいつも元気な母さんが良いんだ! 死なないで笑ってくれる母さんがいいんだ!」
ハントの実の母はもう死んでいる。
死ねば人は笑わない。
綺麗も不細工も関係ない。
美容もなにもない。
それをハントは知っているから。
だから、きっと。
ハントは叫ぶ。
狩りにいくようになってからめっきり怒らなくなったはずの彼が。
「そう思うのが親子じゃないのかよ! おいしそうにご飯食べてる母さんを見たいって思ったら駄目なのかよ! 心配したら駄目なのかよ! ……母さんって思ったら……母さんって思ったら駄目なのかよ!」
涙を流し、鼻水をたらし、自分の服をギュッと握り締め、寂しそうに、それでいて辛そうに悲しそうに。
ハントは叫ぶ。
自分を親と思ってくれていないのではないかと心配していた彼が。
「駄目なの、かよっお母さん!」
嗚咽を漏らして、泣く。
ベルメールが無言で、首を横に振りながらハントを抱きしめる。
「ありがとう、ありが
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