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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第50話 吸血姫
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 音もなくさらさらと崩れて行く、嘗て人の一部で有った肉塊を見つめる俺と、俺にその身を預けるタバサ。
 所有者に必ず勝利をもたらせると言う伝説を持った槍の一撃が、その身体を、この空洞の大地すべてへと変じた太歳星君(たいせいせいくん)の核と成って居た、ブランシュー伯爵の心臓を貫いたと言う事。

 そして、その呪に従って狙い過たず、異界化の核を確実に撃ち抜いたタバサの霊力の制御の冴えは、彼女の魔法の才能と言うべきか、それとも、俺との相性に因る物なのか。
 もっとも、どちらにしても、彼女は俺よりも、俺の霊力を操る術を心得て居ると言う事なのは間違いないでしょう。

 これは、魔女の女王ヘカテーの加護と言う理由だけではなく、彼女が俺の主人である、……と言う属性を持って居る事に理由が有るのでしょうね。

 やがて、闇の心臓が風に散じて仕舞った瞬間、在らぬ方向。具体的には遙か上空から、やや軽薄な……。この場に相応しくないパチパチと言う音が聞こえて来る。
 そして、

「流石は、唯一絶対神と自称している存在や、片目の英雄と呼ばれる存在から目を付けられた事は有りますね」

 聞き覚えのある男声(こえ)に反応し、即座に音源へと視線を向ける俺とタバサ。その視線の先に存在して居たのは、先ほど邪神太歳星君を召喚した後、闇へと消えて行ったと思われた謎の東洋的笑みを浮かべる黒髪の青年。ブランシュー伯爵からは、ソルジーヴィオと呼ばれた、自称商人の青年で有った。

 そのソルジーヴィオが、遥かな高見。足場のない宙空に浮かび、俺とタバサを睥睨しながら、先ほどと同じ東洋的微笑みを浮かべて、パチパチとこの場に相応しくない、かなり軽薄な拍手音を響かせ続けた。

 そして、彼の語った内容。唯一絶対神とは、聖痕に関係しているあの御方でほぼ間違いない。次の片目の英雄とは、魔術を得る為に片目を失った北欧神話の主神にして、戦争と死の神で有るオーディンの事でしょう。
 但し、このハルケギニア世界には、そのどちらの神に纏わる伝承も残されて居なければ、そもそも、俺に聖痕が刻まれつつある事を知って居る人間もタバサただ一人。他には存在しては居ません。

 こいつ。ソルジーヴィオとは、一体何者……。いや、何モノと言い直すべきですか。

 俺が警戒を強め、タバサも、一度緩み掛けた気を再び戦闘モードに移行する。
 そんな俺と、そしてタバサの周囲を、再び活性化した精霊たちが、舞い、歓喜の歌を歌い始めた。

「そんなに警戒しないで欲しいですね。僕は、本当に君たちの事が気に入っているのですから」

 思わず微笑みを返しそうな笑みを浮かべたまま、俺とタバサを見つめるソルジーヴィオ。
 笑っている。そう、嗤っている。
 しかし、何故か。いや、当然のようにその笑みからは、異質で
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