暁 〜小説投稿サイト〜
星河の覇皇
第四部第三章 愚か者の楯その六
[1/5]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

 その継承した人物も最後の皇帝の曾孫か何かだったという。正直その血筋は怪しいと言われる。だが言い換えるとエチオピア皇室の血はエチオピアの国民全員に流れている。何とでも言えるところがあった。ここまで長い歴史があると流石にそういう見方もできた。
 日本もそうであった。神武天皇はやはり実在した、という主張はこの時代にもある。おそらく実在したであろうが年代は合わない、という主張もある。
 やはり少なく見積もっても三千年程の歴史があるのだ。その間多くのことがあった。二つに分かれたこともある。
 そうしたものについて語るのである。中途半端な学識では到底語れるものではない。単純に皇室の存在について反対するのは一千年前に終わった。今ではそのような当たらないところから石を投げて自慢しているだけの行為は論理にも何にもならない。馬鹿にされるだけである。
 そうしたことがあるからおいそれとは語れないのだ。イギリスやオーストリアの王家と比べても比較にならないものがあった。日本がアメリカや中国、ロシアといった他の大国に対して国力で劣るところがあってもその権威で勝るのはその伝統を持つ皇室の存在があるからだ。そこまで伝統は強いものであった。
 連合においてもそうである。貴族主義の強いエウロパではどうか。言うまでもない。
「あの権威主義者の集まりでよくそこまでなれたものです」
 秘書官は皮肉を込めて言った。
「権威主義は何処にでもあるが」
「失礼、では言い替えましょう」
 彼は一旦言葉を引っ込めた。
「貴族主義です」
 そう言うと口の端を歪めてみせた。
「あまり変わらないと思うが」
「ふふふ」
 秘書官は大のエウロパ嫌いである。それが表面に出たのだ。
「確かモンサルヴァート元帥はサハラ総督府で艦隊司令をしていたのだったな」
「はい」
「そして部下達と共に本土へ戻ったのか。本道防衛の為に。すると今の総督府にはマールボロ元帥しかいないことになるな、知られた人物は」
「いえ、新たに一人赴任したそうです」
「誰だ?」
「ロギ=フォン=タンホイザー上級大将です」
「知らないな」
 八条にとってははじめて聞く名前であった。
「ご存知ありませんか」
「残念だが。どういう人物だ?」
「ドイツのある公爵家の嫡男だそうです」
「貴族か」
「はい」
 これは八条にもわかっていた。『フォン』は貴族、それもドイツ系の者に授けられる呼称だからだ。イタリア系だと『デル』、フランス系だと『ド』になる。
「だとするとかなりの若さでそれなりの地位に就いているな」
「はい。まだ二十代前半だそうです」
「また凄い昇進の速さだな。家柄だけではないな」
「はい、軍人としての能力も卓越したものだという話です。ただ」
「ただ?」
 八条はそこに突っ込みを入れた。

[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ