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星河の覇皇
第四部第三章 愚か者の楯その五
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「他のことにも活躍することになるかも知れない」
「それはどういうことでしょうか?」
「うん」
 八条は秘書官に問われて表情を引き締めさせた。
「将来はテロリストや宇宙海賊以外の勢力とも戦う可能性があるということだ」
「エウロパですか?」
「エウロパか」
 彼はふと考える顔をした。
「確かに彼等の存在は常に気にかかるが」
 八条の心には別に引っかかるものがあった。
「まさかな」
 だが彼はそれは打ち消した。
「彼等と戦う理由は何もない」
「長官」
 そこで秘書官の声が聞こえてきた。
「ん!?」
 八条はそれで我に返った。
「ああ、済まない。少し考え事をしていた」
「しっかりして下さいよ」
 秘書官はそんな彼を見て苦笑した。
「今長官にうっかりされては困りますから」
「申し訳ない。まあエウロパとは干戈を交える可能性があるな」
「やはり」
「今エウロパ強硬派が台頭してきているしな」
「モハマド氏ですね」
「そうだ。改革派のな」
 今連合は二つの勢力が盛んに議論を交あわせている。キリ=ト=マウイ率いる保守派とランティール=モハマド率いる改革派での間である。
 保守派の主張は現状維持である。このまま適度に連合中央政府の権限を集めたまま今まで通り辺境地の開拓等を進めていくべきだという考えである。
 これに対し改革派はより中央政府の力を強めるべきだという考えである。そして開拓はもうかなり進んだとして対外政策に積極的にあるべしという主張だ。
 実際に開拓地は進んでいるといえば進んでいるしまだだといえばまだである。そもそもまだ何十万光年もの距離において拡がっているこの膨大な開拓地なぞ百年や二百年で開拓できるものではない。それが為に連合はエウロパのように人口や食料、資源の問題で悩むことはないのだが。入植された惑星では開拓は進んでいる。すなわち着眼点の違いの問題である。問題はこれが外交問題、そして各国の意見の相違にまでなっていることだ。
 保守派は日本やアフリカ諸国に多い。彼等は連合においては中央政府の権限集中を主張したがそれ今の時点以上のものは望んでいない。連合軍が設立された時点でよし、とするものだった。
 改革派はアメリカや中国、ロシア、環太平洋諸国であった。彼等は中央の権限強化には反対であったが今では主張を変えていた。彼等は今こそエウロパを倒すべし、と考えたのだ。これは歴史の問題よりも野心があった。エウロパの資源や領土も自分達のものにしたいからだ。
「そして改革派はエウロパを併合したらどするつもりなのでしょう」
 秘書官が尋ねた。
「おそらくその領土や資源を分割するつもりだろうな」
「それでしたら開拓地に行けばいいだけでは」
「どうも彼等はそう考えてはいないらしい」
「わかりませんね」
 秘書官
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