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星河の覇皇
第三部第四章 命運は決するその三
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戦争の話を見たり読んだりしていてな。それでそうしたんだ」
「そうだったのですか」
 どうやら子供の頃からの夢であったらしい。
「そして戦場にはじめて来た時思った。俺の性に合っている、とな」
「ですか」 
 おそらく彼は軍人としての適性があったのだろう。そして元々戦場が好きだったということも幸いした。
「どんな状況でも死ぬなどということは考えられなかった。そして勝つことだけを考えていた」
「そして今まで戦ってこられたのですね」
「ああ」
 アッディーンは答えた。その言葉に迷いはなかった。
「カッサラの時もそうだった。我ながら思いきったことをしたとは思うが」
「あれで戦局が変わりましたからね」
 カッサラの戦いにおいてのアッディーンの行動は最早伝説にまでなっていた。側面に攻撃を仕掛けようとするサラーフ軍の部隊の前に急行し総攻撃を仕掛けたのである。一艦でその動きを止め戦いの流れを引き寄せたのだ。
「しかし死ぬとは全く思わなかった。絶対にこれで勝てると思ったのだ」
「凄いですね」
「そういうわけではない。あの時サラーフ軍は攻撃を正面から受けるなど思いもしなかった。だからそこを衝いたのだ」
「そうだったのですか」
「相手の思いもよらぬところをつく。それが戦争だ。そして勝つことがな」
「それはわかっているつもりです」
 コリームアは言った。
「ですがそうそうできるものではありません」
「そういうものなのか」
「そうです。それが出来るからこそ閣下は凄いのです」
「俺はそうは思わないがな」
 アッディーンはその言葉を否定した。
「俺は戦争が上手いだけだ。他には何もないぞ」
「果たしてそうでしょうか」
「それはどういう意味だ?」
 アッディーンはその言葉に反応した。そしてコリームアに顔を向けた。
「人間には隠れている能力があります」
「俺にはまだその隠れている能力があると言いたいのか」
「はい。それはその時にならないとわからないものです」
「そういうものかな」
「ええ。まあ今閣下は軍人として優秀ですからそれでいいと思います。しかし」
「しかし!?」
 アッディーンは問うた。
「それだけでも素晴らしいことだと思いますよ」
「そうなのか」
「ええ。それでオムダーマンに貢献されているのですから」
「ならいいがな」
 アッディーンはそれを聞くとフッと微笑んだ。
「やはり役に立たないより役に立つ方がいいものだ」
 それは誰もが同じである。アッディーンもそうであった。
「はい。閣下は軍人として存分に活躍して下さい。ですが」
「ですが!?」
 アッディーンはコリームアの言葉に顔を向けた。
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