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星河の覇皇
第八部第四章 総動員令その六
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る。
「今日ここに来たのは単に顔を見せに来たわけじゃないだろ」
「わかってるんだね」
「当たり前だ、わし等を何だと思っている」
 彼は息子に対してそう言った。
「御前の親だぞ、親が子供のことをわからないでどうするんだ」
 実際には全くわからない親もいるのだが彼等は違っていた。少なくとも無責任な親ではなかった。
「あれだろ、結婚の話」
「うん」
 アッディーンは父に対しそう頷いた。
「新聞とかで見たぞ。何でもティムールのお嬢さんと結婚する話が出ているのだな」
「ああ。それをどうしたらいいかと思ってね」
「それでうちに帰ってきたんだね。私達に相談する為に」
「その通りさ。どのみち結婚するとなったら父さんや母さんに話をしておかなくちゃいけないしね」
 サハラでは結婚は個人同士というよりは家同士の結び付きを強める意味合いが強い。これはエウロパの貴族達と似ているといえば似ているかも知れない。なお妻はイスラムの戒律に従い四人まで持ってもよい。だが公平に愛さなくてはならないのはこれも同じである。昔から何かと批判されてきたこの戒律であるが実は戦争による未亡人とその家族に対する救済策である。だからこそムハンマドが定めたのである。実際にはムハンマドは女性に対しては当時としては極めて公平な考えの持ち主であった。フェミニストであったと言っても過言ではないだろう。少なくともイスラム以前の部族社会の様に女の子ならば殺すということはなかった。彼はそれを厳しく禁じていた。男であろうと女であろうと子供は殺してはならない。彼はそう教えたのである。
「その通りだがな。だが」
「相手が普通の家の女の子だったらよかったんだけれどねえ」
「ああ」
 それが彼等にとって最大の悩みであった。シャイターン家は確かに悪名高いがサハラにおいては屈指の名門である。それに対してアッディーンの家はごく普通の市井の市民の家である。資産など最早比べることすら馬鹿馬鹿しい程であった。何もかもが違っていた。そもそも住む世界が違うのである。
「結納等は何とかなるのか」
「それはね」
 アッディーンは答えた。
「僕も給料はかなりもらっているし」
「そうか」
 元帥、副大統領ともなればその給与はかなりのものである。ましてやアッディーンは官舎住いであり贅沢はしていない。趣味も読書や映画鑑賞等でありこれといって金のかかる趣味は持っていない。だからその貯蓄はかなりのものとなっているのである。株や土地等資産を増やすことに興味はないが元帥だけあってその給与はかなりのものである。それで充分過ぎる程の資産があったのだ。だがそれでもシャイターン家のそれとは比較にもならないものであったが。
「それで結納の方は何とかなるよ」
「じゃあそっちは心配しなくていいんだね」
「うん。何とかやれるよ」 

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