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星河の覇皇
第八部第四章 総動員令その五
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「これが普通の婚約話なら何の問題もない」
「そうなのです」
「相手が相手だな。まさかシャイターン主席の妹君だとは」
「どうするべきでしょうか。やはり何かしらの政治的意図があると思いますが」
「間違いなくな」
 ブワイフは言った。
「おそらく彼は我々と手を結びたいのだろうな」
「我々とですか」
「おそらくな。今連合とエウロパが緊張状態にある」
「間違いなく戦争になるでしょうね」
 アッディーンにはそれが読めていた。だからこそそれに答えることができたのだ。
「そうなったらどうなる。エウロパの総督府は」
「戦局によりますが兵を本土に向けなければならない状況も起こり得るでしょう」
「そこが彼にとって狙い目だ。総督府をサハラから追い出しサハラを完全に回復する。我等にとって永遠の悲願を彼が果たすのだ」
「それだけで彼の評価は著しく上がるでしょう」
「それだけではないな。その広大な領土を手に入れることができる。そしてそこに難民達を戻し開拓させる。それで国力は飛躍的に上昇する」
「はい」
「彼にとっては悪いことは何一つない。ティムールにとってもだ」
「ティムールはそれによって我々やハサンと肩を並べる勢力になるでしょう。ですがそれをハサンが許すとは思えません」
「それだ」
 ブワイフはアッディーンを指差して言った。
「彼等にとっての最大の脅威はハサンなのだ、今はな」
「はい」
「彼等を牽制できる存在が必要だ。しかもサハラにおいて」
「連合ではなく」
 彼等は連合とティムールが接触しているとの情報も掴んでいたのだ。だがその詳しい内容までは知らなかった。
「連合はエウロパと全面戦争に入る。牽制は期待出来ないだろう」
「はい」
「だとすればだ。やはりサハラしかあるまい」
「それで我々を選んだのですか」
「私はそう思うが。貴官はどう思うか」
「戦略としては妥当だと思います」
 アッディーンはそう答えた。
「後顧の憂いを断つのは戦略において常識であります」
「そうだな。では彼が貴官に妹との婚姻を申し出た理由がわかるな」
「はい」
「それをどうするかだ。これは今後の我が国にも大きく関わってきかねない問題だ。悪いが貴官だけの問題ではない」
「はい」
「返答を聞きたい。どうする」
 彼は詰め寄るようにして問うた。
「婚姻を承諾するか否か。どうするかね」
「そうですね」
 彼は暫し悩んだうえで答えた。
「まだ暫く考えさせて下さい。即答するにはまだ」
「そうか」
 ブワイフは彼の目の色を見ていた。
「ではゆっくり考え給え。私は基本的に貴官の意思を尊重したい」
「有り難うございます」
「よい結論を期待する。頼むぞ」
「はい」
 そのよい結論が何かは彼にはよくわからなかった。だがいずれにしろ結論を
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