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【旧】銀英伝 異伝、フロル・リシャール
第3次ティアマト会戦(2)
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ムラサメ、死ぬのが嫌なら捨てろ!」
『ポプラン、敵が追いつくぞ』
「ムラサメ!」
『パ、パージします!』
 しかし、ここで最悪の事態が起こった。スパルタニアンに増設されたその歪な設備を強制パージした瞬間、ムラサメ機のバランスが完全に崩れたのだ。ポプランなら、コーネフなら、そのような振動も制御してみせただろう。だが、ムラサメにそれだけの技術はなかった。
 ガン、という衝撃音がムラサメのマイクからポプランに伝わる。
 とっさに振り向いたポプランは、後方で大きく前のめりに態勢を崩した、ムラサメ機を見つけた。
「バランスを取り戻せ、操縦桿を離すな!」
 ポプランはディスプレイの向こうのムラサメに叫んだ。
『ポプラン隊??』
 だが、ディスプレイの映像は途切れ、彼の後方に爆発の光が上がった。
 ポプランの心臓が一瞬止まる。
 だがその次の瞬間から、彼の体をアドレナリンが駆け巡った。
 心拍数が急速に上がる。
 静かに、操縦桿を握り直した。
『……ムラサメ機撃墜』
「くそったれ!」
 コーネフから感情を殺した報告がされた刹那、ポプランは操縦桿を思い切り引き上げる。
 フットペダルを踏み込み、
 猛烈なGがポプランを襲う。
 視界が赤くなるほどの重圧の中、
 ポプランは的確に操縦桿を動かした。
 スパルタニアンをコントロールする27の噴射ノズルが有機的に炎を吹き上げる。
 機体が宙返りをして、
 一気に加速した。
『ポプラン!』
「コーネフ! おまえは先に行け! 俺がここで足止めをする!」
『だが!』
「追いつかれるよりここで釘付けにした方が良い! それに本部に早くこの奇襲を教えろ!」
『……死ぬなよ』
 コーネフ機が一気に加速したのが、近距離レーダーに映っていた。ジグザクと機体を動かしながら、瞬く間にスピードを上げて行く。宇宙を漂う漂流物に衝突しないよう、猛烈な勢いでそれらを回避しつつ、コーネフは味方のいる方向へ飛び去って行った。
「俺を誰だと思っている!」
 ポプランはまっすぐ突っ込んでくる先頭のワルキューレに向かう。
 ウラン238弾で弾幕。
 敵が下方に逃げようとして、
 鋭くロール。
 機体上部の中性子ビーム砲を向け、
 すれ違いさま、
 ワルキューレのコックピットを切り裂いた。
 アドレナリンで興奮状態にあるポプランには、コックピットから溢れる血の色すら、視認できる。
「一機!」
 ポプランは叫びながら、機体を半ループさせて距離を稼ぐ。ポプランが生きて戻るには、徐々に味方艦隊に近づきつつ、敵を足止めするしかなかった。彼はコーネフに言ったように生きて帰るつもりだった。
 敵機は23機。
 だが、勝機がないわけではない。
 ポプランがもっとも有効と考える空戦戦術は、三対一で敵を
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